街に潜むアートの種 – 青崎伸孝 『at the moment』

青崎伸孝

statementsで青崎伸孝さんの個展が開かれています。
ニューヨーク在住の青崎さんらしい、
アメリカンな雰囲気満載の展示です。

大きな壁に貼られたメモ用紙たち、
縦横の線が描かれ、道案内の地図であることがわかります。

「From Here to there “Manhattan”」
見ず知らずの人に描いてもらった地図の数々。
同じ通りが重なるように並べていったところ、
マンハッタンの地形が浮かび上がってきたのです。

青崎伸孝
満遍なく集めれば当たり前のことではと思いましたが、
よくよく考えるとかなり面白い。

関係のない人たちに描いてもらった地図なのに、
繋ぎあわせるとマンハッタンの形になるのは、
それぞれの地図の縮尺がだいたい合っているということ。

どうやら、数ブロック先ぐらいの近い場所を描いてもらっているようです。
街角で道を聞かれたとき、
人がどんなふうに地図を描くのかを観察することで生み出された
極めて心理学的な作品といっていえるのではないでしょうか。

青崎伸孝

そして、フォーチュンクッキーのおみくじで作った
「Fortune Cookie Dictionary」
アメリカで中華料理店で食事をすると、最後にこのクッキーが登場、
中に紙が入っていて、表は英語で運勢が、
裏には中国語の単語とその英訳が書いてあります。

青崎さんは、ひたすら中華料理を食べ、おみくじを収集、
中国語の辞書を作り上げました。
超ミニサイズですが、ちゃんとインデックスも付います。
さぞ気の遠くなるような作業だったことでしょう。

青崎伸孝
さらにこの辞書を持って中国系のスーパーマーケットに行き、
辞書に書いてあるものを中国語で注文するというチャレンジも敢行。
おまけの存在でしかないおみくじが、
立派なコミュニケーションツールに生まれ変わった瞬間。

街を見渡せば、アートの種に溢れています。
ところが、フォーチュンクッキーは知っていても、
それがアートの種であることに気づきません。

青崎さんは、街に生きる人々を観察し対話することで
街に潜んでいる種を見つけ出し、アートへと価値を変換させています。
その感性と構想力を味合うことのできる展覧会。

青崎伸孝
青崎伸孝『at the moment』
2016年5月14日〜6月26日
statements


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