9つのおもちゃ箱 – 『カフェ・イン・水戸 R』

カフェ・イン・水戸  R

8月1日より、水戸芸術館現代美術センターで
『カフェ・イン・水戸 R』展が始まりました。

カフェとは、“Communicable Action for Everybody”のイニシャルからとった名称、
美術館の展示だけでなく、市民参加型のプロジェクトを行うことで
多くの人が水戸に集うことを目指しています。
今回で5回目。

美術館では9組のアーティストの作品が展示されています。
部屋ごとに全く違う世界、
アーティストの想いにあふれた世界を楽しむことができます。

宮永愛子さんの「Rebirth – 空中空」
天井が高く暗い空間に、
ぼんやりと白く光る蝶が幻想的に舞っています。

人は、空中というと、自分より上の空間をイメージしますが、
宮永さんは、自分より下も空中があると考え、そんな世界を表現した作品です。
タイトルの「空中空」はシンメトリーで、
まさに両方向への広がりを示しています。

そしてもう一つ大事なテーマが時間、
白く光る蝶はナフタリンでできていて、
いくつかの蝶は、ナフタリンの昇華により、一部形が崩れています。
その一方で、蝶の周りを囲むケースに、ナフタリンの結晶が出現、
時間の中で繰り返される崩壊と再生の物語。

続く部屋も暗い空間、
部屋の中央に、文庫本くらいの大きさの本が数冊開かれた状態で置いてあります。
そして、本のページに、木漏れ日の映像が投影されています。

志村信裕さんの作品です。
志村さんは、水戸についてリサーチしたところ、
岡野湖中という人を見出しました。
水戸藩士であり、松尾芭蕉の最初の全集「俳諧一葉集」を刊行した人です。

ところが、水戸の人々に尋ねても、湖中のことを知る人はほとんどいません。
アートの題材だけでなく、水戸の歴史の再発見の意味もありました。
「俳諧一葉集」を古本屋で探し出し展示しました。

志村さんは、光を投影する対象を何にするか考え作品を制作しています。
次の部屋では、漁網に映像をあて、波のゆらぎを表現しています。

そして、湖中の句がプリントされた短冊をプレゼント。

志村信裕
山下麻衣+小林直人の二人のユニットの作品、
「How to make a mountain sculpture」。
薪用の木を使って山の形を作っています。
最初は、海外の山を作っていましたが、
震災を機に日本の山を作るようになりました。

そして、まだ震災の傷跡が残る福島をさりげなく描いた
「春の福島の絵を描く会」。
子供のころ、絵を描く会があり、写生に出かけた経験から発想された作品です。

目【め】の作品「Replicational Scaper」は、
フィクションなのかノンフィックションなのかわからなくなる世界。
実際にその不思議さを体験してほしい作品です。

それぞれの部屋の扉を開くたびに、
全く異なる作品と出会うことができる、
まさにおもちゃ箱といえる展覧会。

カフェ・イン・水戸 R
水戸芸術館 現代美術ギャラリー、水戸市内
2015年8月1日[土]~ 2015年10月18日[日]