「まちにホワイトキューブが飛び出し拡がっていく」というコンセプトで造られています。
敷地内に十数個のホワイトキューブ(展示室)が分散し、サイコロを転がしたようにそれぞれバラバラな方向を向いています。
そして大きさもバラバラ。一つの展示室には一つの作品が設置されています。
つまり、作品の大きさに合わせて展示室が作られている作品本位の発想。
各展示室とも素晴らしい作品が展示されていますが、
街灯好きな私としては、Hans Op de Beeckの”Location (5)”がお気に入り。
この展示室はとても暗い。目が慣れてくると、どうやらファミレスのよう。
4人掛けの座席がいくつかあり、座って窓を見ると高速道路と道路を照らす街灯が彼方へ向かって走っています。
本当に道路があってずっと続いているように見えるのは、オレンジの街灯が点々と連なっているから。
やはり街灯がもつ意味は大きい。
Hans Op de BeeckのWeb siteに、この作品のスケッチが掲載されています。
道路部分のスペースがかなり大きく、傾斜をつけてあるといったイリュージョンを生む構造を知ることができます。
そして、道路はもちろんファミレスの座席や調度品も全て自作しています。
Ready-madeを使わないことで、fakeであることを主張しています。
ところが、暗く狭い空間の向こうに、彼方に続く高速道路が見えると、fakeであることがわかっていてもずっと見続けてしまう、それがこの作品の魅力です。
絵画的だとHans Op de Beeckは言います。
もう一つ展示室が独立しているならではの作品があります。
栗林隆さんの『ザンプランド』。この名称、ドイツ語で湿地帯を意味するそうです。
部屋の天井に穴が空いていて、そこから天井裏を覗く作品。
森美術館や札幌国際芸術祭でも、穴から覗く作品がありましたが、そのときは和紙でできた森の清廉な世界が広がっていました。
ここでは、湿地帯という名称の通り、天井裏には霧が立ち込め本物の湿地が創られています、この光景は想像していませんでした。霧や植物は、アート作品にとってはいわば天敵、この作品が設置できるのも部屋が独立しているからと言えるでしょう。
展示室に入った時に見える光景はとても静的なのに、見えない所で生命が息づいていて成長を続けています。
本質的なことは簡単には姿を見せてくれないのです。
覗いた時霧が直接顔にかからないようになっていますが、油断すると髪がビショビショになるので要注意!