東京芸術劇場で、野田秀樹 作・演出の舞台『逆鱗』が上演されています。
とある海中水族館に巨大な水槽が造られている。
海の底から人魚を捕獲して、この水槽で見せるという計画。
その人魚の捕獲に駆り出された7人の若者。
生けどりする役割であり、鵜のような存在。
そのうちの一人、モガリ・サマヨウ(瑛太)が海の底に辿り着き、人魚たちに出会う。
そこには、一人の老婆「鰯ババア・逆八百比丘尼(銀粉蝶)」と若い人魚たち。
八百比丘尼は、人魚の肉を食べて800歳まで生きたという伝説の尼の名前、
若い人魚たちは、鰯ババアよりも早く死んでしまう。
一方、水族館では、人魚をなかなか捕獲できない中、
多くの若者に募集のビラが配られる。
「志願するかどうかは自分の意志で決めるように!!」
そして、人魚の捕獲を推進する人魚学者・柿本魚麻呂(野田秀樹)と
謎の女・鵜飼ザコ(井上真央)。
そういえば、梅原猛さんの著作に、
『水底の歌』という柿本人麿についての評論がありました。
登場人物の名前にも、次から次に繰り出されるエピソードにも
多くの伏線が張られ、スピーディに展開していくのが野田演劇の真骨頂、
今回も快調に話が進んでいきます。
そして、芝居のタイトルの『逆鱗』。
『韓非子』に出てくる故事で、龍の81枚の鱗のうち、
あごの下の1枚だけが逆さに生えるといいます。
その逆鱗に触れると、龍は激昂し、触れたものを殺してしまうことから、
「逆鱗に触れる」という言葉が生まれました。
この芝居では、人魚にも逆鱗があって、人がこれに触れた時、
思いもよらぬ驚愕のシーンが現れます。
野田秀樹自身がプログラムに書いていますが、
もっともっと多くのエピソードを考えついたけれども、
使われることなく消えて行きました。
それだけ洗練された脚本で、とても見ごたえのある舞台。
偏向板を使った舞台がとても効果的で、
本当に水槽に鰯の群れが泳いでいるかのようなシーンを作り上げています。
そして、謎の女を演じた井上真央の、
実は人魚なのではと思わせる妖艶さにすっかり魅了されてしまいました。
キャスト
松たか子 瑛太 井上真央 阿部サダヲ
池田成志 満島真之介 銀粉蝶 野田秀樹
作・演出 野田秀樹 美術 堀尾幸男 照明 小川幾雄 衣裳 ひびのこづえ 選曲・効果 高都幸男
振付 井手茂太 映像 奥秀太郎 美粧 柘植伊佐夫 舞台監督 瀬﨑将孝 プロデューサー 鈴木弘之
東京芸術劇場プレイハウス
2016年1月29日〜3月13日