髙畠さんは、油絵具を糸のように細く絞り出し、
キャンバスに縦横斜めに何層にも配置、
テキスタイルのような作品を創り出しています。
重層された絵具のライン、近づいて観た時と離れて観た時とで、
その表情が大きく変化します。
さらに、絵具が乾く前に強い風をあて絵具を吹き飛ばすことで、
弾けるエネルギーを感じさせる作品も見せてくれました。
そして今回、彼女が出会ったのは水。
油絵具にとって相入れない水が表現の幅を広げました。
髙畠さんは、水を使ったことで地球を感じたと言います。
38億年前、地球上に誕生した生命。
その誕生の場は海の中、水が必要だったのです。
地球と同様に、髙畠さんの作品も水を得たことで、
直線から有機的なラインに変貌し生命誕生を感じるものになりました。
水を張ったプールにキャンバスを沈めておき、
そこに油絵具を置いていくと、最初は絵具は水に浮いていますが、
絵具の塊が大きくなってくると、ある時点で沈んでいきます。
これを繰り返していくと神経細胞のネットワークのような世界が出現したのです。
別の作品では、プールにシルバーの顔料を浮かべておき、
油絵具をおいていくと、絵具が沈む時に顔料をトラップするため、
生命の痕跡のようにシルバーのラインが生成しました。
テキスタイル様の整然とした美しさとはまた違った「ざわめき」。
さらに、白い絵具で格子を描いておき、そこに球状の氷をぶつけるということにも挑戦。
氷が溶けてなくなるまで投げ続け、
氷がぶつかった部分はクレーターのような凹みが。
氷をぶつけているときは大工作業のような大きな音がしていたそうですが、
太陽系ができた頃、無数の微惑星が月や地球に降り注いだのと同じダイナミズムを感じます。
『2001年宇宙の旅』に登場するモノリスを思わせる
地球の誕生、生命の誕生、そして人間の好奇心を表現した意欲的な作品です。
髙畠依子 『泉』
2018年4月14日 – 5月19日
ShugoArts