大竹しのぶ、宮沢りえ、松たか子、
この三人は、今最も輝いている舞台女優だと思っている。
その中の二人、大竹しのぶと宮沢りえが共演する
見逃すことのできない舞台、
『火のようにさみしい姉がいて』
楽屋の鏡に向って「オセロ」の台詞をつぶやく男(段田安則)。
開演15分前、
かつて女優であった妻(宮沢りえ)が入ってくる。
昨日うまくいかなかった場面の稽古を始める二人、
稽古のはずが迫真の演技となり
いつしか男は妻の首をしめている...
男は現実と芝居の区別がつかなくなっている。
転地療養を薦められ
故郷に帰ってきた男と妻、
道を聞こうと立ち寄ったうらぶれた床屋で出会った女(大竹しのぶ)、
床屋の鏡を見ながら、
女と男は、男の少年時代の話を始める。
その話は果たして現実なのか、それとも虚構なのか...
この作品は、清水邦夫の作で1978年の初演、
当時の芝居の言葉には重みがあった。
芝居の中で繰り返されるシェイクスピアの台詞には
特に威厳があり、450年上演され続けてきた力を改めて感じる。
登場人物はけっこう多いが、
重厚な台詞を弾丸のように話し続けるのは、
大竹しのぶ、宮沢りえ、段田安則の三人。
現実と虚構の境をいかに消し去ることができるか、
この三人の力の見せ所。
元女優らしい凛とした美しさの宮沢りえと
亡霊が出てきたかのような妖艶さの大竹しのぶの対決、
そして二人の女性の間で翻弄される段田安則
見事に曖昧な世界を描き出している。