株式会社E&K Associatesは、2022年3月19日THE MEANING OF WORKと共催で、ビジネスパーソン向けのアート思考ワークショップ「Artistic Interventions」をオンラインで開催しました。
本ワークショップは、企業の人材育成や新規事業探索などを担当されている方を対象にしています。そして、アート思考の概要の講義と、現代アーティストの下道基行さんとの対話の2部構成で実施しました。今回は、10社16名の方に参加いただきました。
ワークショップ 第1部:アート思考についての講義
第1部は、弊社、長谷川より以下の内容を説明しました。
- アップル社が全く新しいファブレスの仕組みを作っている。これもアート思考ということができる。アート思考は形あるものに限らず、自分達の常識を覆して新しいコンセプトを創造する。いわゆるトランスフォーメーションを起こすための思考法である。
- 現代アートは、アーティストが興味をもったり違和感を感じたりした社会事象に対して、常識を覆すコンセプトを創出する。そして、アート作品として表現している。アーティストが行っていることは、社会にトランスフォーメーションを促すこと。
- アーティストは企業人に比べ、社会事象に対する感度、コンセプト創出の思考の飛躍がはるかに大きい。したがって、アーティストとの対話で思考の飛躍を学ぶことは、企業変革や新規事業創出に効果的。
ワークショップ 第2部:アーティスト・下道基行さんの作品紹介
第2部では、現代アーティストの下道基行さんから、自身の作品について、どのようなことを考えて制作したかを紹介していただきました。
- 『戦争のかたち』 日本には、戦時中航空機を格納した設備などの建造物が多数残されている。現在は、農機具の倉庫、動物園のサル山など新たな機能として使われている様子を記録した作品。
- 『torii』 神社の入り口に建てられている鳥居、これは神道の聖域と俗域とを分ける境界である。明治から第二次大戦終結まで、神道は管理植民地主義に利用された。そのため、東アジアの各地に多くの神社/鳥居が建てられた。これらも現在は全く異なる用途として残されている。
- 『ははのふた』 結婚して奥さんとお義母さんの3人で生活するようになった下道さん。お義母さんがお茶碗などに、近くにある関係ないものをふたとして被せることに気がつき撮影した作品。「不器用でいびつでかわいらしい新しい関係が食卓の上にある気がした。」
- 『鍰造景』 下道さんは、2020年に瀬戸内海の直島に移住した。この島には三菱の銅の製錬所があり戦前より稼働していた。銅精錬で出てくる不純物は鍰(からみ)と呼ばれ、レンガに使われていた。今も残る鍰の風景を記録しマッピングした。現在は、さらに日本全国に範囲を広げ調査を続けている。
ワークショップ 第2部:対話型鑑賞
下道さんが2019年にベネツィア・ビエンナーレで発表した『津波石』を参加者に観てもらいました。そして、『津波石』がどのようなコンセプトの作品かをグループディスカッションしました。そして、「石の時間と人の時間の差を表現している」、「石に意思を感じる。ダブルミーニングを表現している」といった多様な意見が出てきました。
参加した皆さんにとって、アーティストとの対話は初めてのことです。そのためもあり、予定時間を超えて質問やコメントを投げかけていました。
参加された方からは、「普段接する機会の少ない内容で、非常に感性を揺さぶられるものがあった。」、「自分事として落とし込んで次のアクションに繋げられたら、何かが生まれそうな予感がする。」、「美術には興味をもってこなかったが、美術館に行ってみたくなった。さっそく西洋美術の本を買ってみた。」と言ったコメントをいただきました。
E&K AssociatesとTHE MEANING OF WORKは今後も産業界とアートとをつなぎ、企業変革を促すことに尽力してまいります。
アート思考ワークショップ 関連リンク
アート思考入門(9)対話型鑑賞、創出過程を想像(戦略フォーサイト)
アート思考入門(10)世の中見る解像度を上げる(戦略フォーサイト)
アート思考入門(12)芸術家と対話、痛烈な刺激(戦略フォーサイト)