清水寺、京都の代名詞とも言える名刹、本堂の威風堂々とした姿はなんとも魅力です。
この清水寺の経堂と成就院で、桑田卓郎さんの陶芸が展示されています。
経堂は、平安時代、全国から学問僧が集まった講堂でした。
一方の成就院は、幕末、西郷隆盛などの志士たちが集まり密談をした場所でもあります。
京都では二条城など歴史的建造物を使った展覧会が増えています。
各展覧会とも場所の特徴を活かした展示が行われています。
今回の清水寺での桑田卓郎さんの展示は、圧倒的な迫力を感じました。
現代の五百羅漢
桑田さんの色も形も個性的な作品は生き生きとしていて、
元から安置されている仏像をも凌ぐエネルギーを感じます。
展示されている作品の数も多く、巨大なものからちっちゃいカップまであって、
五百羅漢像を見ているかのようです。
仏像にはそれぞれ表情があります。観音さまがたたえる微笑、お地蔵さんの純朴さ、不動明王の迫力、
これらは全て人間の心が持っている様々な側面を形象化したといわれています。
お寺で仏像に手を合わせその表情と向き合うことは、自分自身の存在と向き合い、
自己受容を深めていくことなのです。
桑田さんの作品は顔こそありませんが表情が豊かで力強く、
仏像と同じように自己と向き合うパワーがあり、将来どこかの寺の本尊になっているかもしれません。
お寺と現代アートのコラボレーション
今回展示されている成就院は、美しい庭もありとても落ち着く空間です。
お寺のいいところは、日常とは違う時間がながれ落ち着けるところ、
長い歴史を経てもいつもそこにあり、人々を迎えてくれる安心感や心地よさがあるところでしょう。
私は時々写経をしにお寺に行きますが、その時は凛とした空気の中で自分と対話することができます。
お寺は人々が祈りに来るところ。もともと「いのり」の語源は「生(い)+宣(の)り」、
いのちを生き生きと生きるという意味があります。
手を合わせて神仏に救いを求めるだけでなく、日々への感謝、自然の声に耳を傾ける、
自己に向き合い無心へと近づいていく...
全て祈りの姿です。
桑田さんの、真摯に土と向き合い、無心になって一つ一つの作品に命を吹き込む作陶の姿勢もまた祈りの姿。
作品制作へ取り組む姿勢が強調されるところもお寺での展示の面白さ、少し時間をとって、作品との対話、
そして自分との対話を楽しみたいものです。
お寺と現代アートとのコラボレーションはこれからも増えていくと思いますが、
お寺の持つ精神性とアーティストの思いが呼応して、観る人たちが生宣りを感じ、
自分自身とも対話できる展示になると素敵ですね。
開催概要
桑田卓郎展「日々(にちにち)」
会期:2019年8月3日〜8月25日
会場:音羽山清水寺(経堂と成就院の2会場)
関連リンク
PREVIEW: A GROUP SHOW OF REPRESENTED ARTISTS