マリー・アントワネット、フランス国王ルイ16世の王妃、
フランス革命勃発後の1793年10月16日、ギロチンで処刑されました。
当時ヨーロッパの貴族の間でファッションリーダーと呼ばれるほど栄華を極め、
最後は処刑されてしまう波乱の生涯はいまも人々を魅了しています。
池田理代子さんの『ベルサイユのばら』、遠藤周作さんの『王妃マリー・アントワネット』、
ソフィア・コッポラの映画と、彼女を題材とした作品は創り続けられています。
「The Antoinette Effect」
そして、TARO NASUで行われたサイモン・フジワラの個展「The Antoinette Effect」、
作品とストーリーが調和したインスタレーションでした。
ギャラリーに入り迎えてくれるのは、ベルサイユ宮殿のロイヤルゲート。
この門はフランス革命で破壊されたものの、2008年に修復され、金箔10万枚が使われたそうです。
マリー・アントワネットの栄華の象徴です。
奥に入ると早くも終焉のとき、マリー・アントワネットが最後に書いた手紙の模写が展示されています。
本物に近づけるため、シミのつけ方を実験したサンプルも一緒に展示されています。
壁には、彼女が捕らえられていたコンシェルジュリー牢獄の壁に描かれている涙を模した
オブジェ・金色の涙が展示されています。
そして一番奥には、金色の巨大なオブジェが二つぶら下がっています。
よく見ると、このオブジェの中央にはギロチンの歯、
一番下には人の顔が描かれています。
処刑された後、ギロチンとマリー・アントワネットの首を模したピアスが街で売られたのだそうです。
ぶら下がっている首は、マリー・アントワネットとルイ16世。
サイモン・フジワラは、この史実に基づき当時のピアスを再現して、
18金のピアスと巨大なオブジェを制作しました。18金のピアスの方はとても美しい。
マリー・アントワネットはダイヤモンドが好きだったので、
片方のピアスはダイヤモンドのみがつけられています。
もう片方はルイ16世、他の石もつけられています。
さらに、マダム・タッソーが作成したマリー・アントワネットのデスマスクの複製。
マダム・タッソーは貴族たちとつながっていて、革命時につかまってしまったのですが、蝋人形の技術を見込まれ釈放、その代わりマリー・アントワネットたちのデスマスクを作らされたといいます。
ストーリーと作品を調和させる
サイモン・フジワラがフランス革命時のマリー・アントワネットの足跡を実際に歩きストーリーと作品を構築しました。
マリー・アントワネットは、自分が消費した多大な額を長い年月をかけて社会に還元しているとも考えられるとサイモン・フジワラは語っています。
ストーリーテリングのパターンには7つテーマがあると言われます。
今回の話はもちろん悲劇ですが、あまりに悲惨だと私たちは受け入れられません。
今回の展示も、ギロチンのピアスやデスマスクなど人間の狂暴さを表すモノが展示されていますが、
血の色ではなく金色で全体が覆われていて美しさを感じます。
ストーリーと作品が調和することで記憶に残る展示になり、マーケティングとしても効果的です。
この展示は、フランス革命への興味も喚起してくれます。
検索してみると、フランス革命はなぜ起こったのか、その意義は何だったのかといった議論が未だに行われているそうです。
カフェ文化が革命を引き起こしたという論文もありました。
マリー・アントワネットのストーリーはまだまだ続いていきそうです。
開催概要
サイモン・フジワラ「The Antoinette Effect」
会期:2019年7月13日(土)-8月10日(土)
会場:TARO NASU
東京都港区六本木6-6-9ピラミデビル4F
関連リンク
地表の姿 – 松江泰治展「gazetteer」/ TARO NASU
フィギュアの共和国 – ライアン・ガンダー「In practice simplicity has never been a problem」
時間を味わう – Douglas Gordon & Jonathan Monk “PARIS BAR”
Field of View – ポクロン・アナディン『Sidereal Message』