地表の姿 – 松江泰治展「gazetteer」/ TARO NASU

松江泰治

TARO NASU松江泰治さんの個展が行われています。

今回の展示は、松江さんの代表作のひとつ「gazetteer」シリーズ、世界各地を旅して出会った地球表面の姿を撮影したものです。

 

「gazetteer」には地名事典という意味があり、このシリーズの写真を撮影することは、地表の姿を採取している行為ということができます。画面には空を入れず、影がささないように南中時に撮影することで、抒情性を排したサイエンティフィックな画像が得られます。

松江泰治

熱帯雨林から、草原、砂漠、大渓谷と、その姿はバラエティに富んでいて、地球が表情の豊かな星であることを改めて認識することができます。

 

シリーズを撮りだした90年代には、モノクロフィルムとカラーフィルムで撮影し、モノクロのみプリントしていました。当時、カラーはまだプリント技術が十分でなく、松江さんの思い通りのプリントを創ることができなかったのです。

 

技術の進展に伴い、現在はカラーで表現することが多くなったといいます。今回は、同じ場所を撮影したモノクロとカラーのプリントを並べて展示しています。見比べると、モノクロの持つ情報量が少ないので、想像する余地がでてきます。砂漠や山肌が露出している写真は、雪山のようにも見えるし、地球ではない他の星のようにも感じられます。

 

一方で、カラープリントでは、想像もしないような色が写っていることもあります。地球の多様な姿が生命のバリエーションも生み出し、思いもよらぬ美しい色を創り出しているのです。

松江泰治

渓谷の写真などは、かなりの高度から見下ろす画角で撮影していて、空撮とばかり思っていました。ところが、松江さんは基本的にその場所まで自力で行って、地上から撮影していると聞き、これにはびっくり。撮影ポイントに辿り着くまでも多くのエピソードがあるに違いありません。

松江泰治

今回、松江さんの様々な地表の作品を観ていて、地理の授業に使うことができたらいいのにと思っています。緊張感のある写真で勉強できたらずっと記憶に残るでしょうし、とても幸せな経験になるでしょう。地理学に進もうという若者も増えるのではないでしょうか。これもアートの持つ大きな力です。

 

松江泰治 「gazetteer」

2018年11月24日~12月22日

TARO NASU

東京都千代田区東神田1-2-11

 

広島市現代美術館でも、松江泰治 地名事典|gazetteer を開催しています。