ジンジャービールと脱出ゲーム – 田村友一郎『 G 』

田村友一郎

Yuka Tsuruno Galleryで田村友一郎さんの個展が開かれています。
彼の展示は謎めいている。
設定したテーマから縦横無尽に連想を広げ作品を創っていく。

ギャラリーに足を踏み入れた私たちは、脱出ゲームのプレーヤーとなる。
散りばめられた作品をヒントに、
田村が紡ぐストーリーを解読しなければならない。

今回のテーマは『 G 』
それは引力(gravity)の『 G 』
万有引力の発見といえばニュートンとりんご(Apple)

アップルストアの展示用テーブルはどこの国に行っても同じサイズという。
実はこのテーブル、意匠登録をしている。

田村はアップルストアで密かにテーブルのサイズを測定、
ヤフオクでりんごの木箱を調達し、ギャラリーにテーブルを再現した。
しかしケースの中にあるのはApple Watchではなくフォークとナイフ。

田村友一郎


フォークとナイフは、ポルダーガイストで重力に逆らって宙を舞う定番。
そして、ここに展示されているのは、世界中のエアラインが機内食用に使っていたもの、
実際に空を飛んでいたカトラリーたち。
ところどころ金メッキが施されているが、
ニュートンが錬金術の研究も行なっていたことを表している。

展示用テーブルの隅にはりんごが描かれた切手も展示されている。
ニュートンの著書「Philosophiae Naturalis Principia Mathematica
(自然哲学の数学的諸原理)」 発刊300周年を記念して
1987年にイギリスで発行されたもの
細部まで『 G 』にこだわっていて、脱出ゲームそのもの。

田村友一郎

ケンブリッジ大学にはニュートンのノートのデジタルアーカイブがある。
田村は、ニュートンが書いた『 G 』の文字を探した。
そして、ひときわ美しい『 G 』に出会った。

“beer with Ginger instead of Hops”

田村友一郎

ホップの代わりにジンジャーでビールを作ろうとしていたらしい。
そんなニュートンの字はインテリジェンスに溢れている。

このように作品を読み解いていき、時間内に脱出できたプレーヤーには
実際にFEVER TREE社製ジンジャービールが振る舞われた。
このFEVER TREE社も田村に似ている。
1620年代の文献にまで遡ってレシピを求め、Tonic Waterを開発している。

田村友一郎

そして田村は、これまでの自分の作品を盛り込んだ小説を執筆している。
どんな奇想天外な物語になるのか出版が待ち遠しい。


田村友一郎『 G 』
2017年3月11日 – 4月22日
Yuka Tsuruno Gallery