描線の強さ – 大山エンリコイサム『Present Tense』

大山エンリコイサム

Takuro Someya Contemporary Artで、
大山エンリコイサムの個展が行われています。

彼の作品は、グラフィティにカテゴライズされます。
スプレーなどで、壁や電車に落書きしたことが始まりと言われているグラフィティ、
多くの場合、自分の名前などの文字を描いていました。

大山エンリコイサムは、文字の代わりに
「クイック・ターン・ストラクチャー」と呼ぶモチーフを創り、
彼の代名詞として作品の中に描きこんでいます。

今回のメインは、ニューヨークでのライブペインティングを基に
作成した大型の作品「FFIGURATI #133」
インプロヴァイズド・ループスと呼ぶ円弧が中心となっています。
フリーハンドながら正円と思える美しさ、
迷うことなく、鮮やかに描かれる線、
独特の緊張感、そして強さを感じます。

大山エンリコイサム
円弧から滴り落ちる墨の流れに溢れる、野生の息遣い。

大山エンリコイサム

メインの作品から隠れるように並んだ小さなキャンバスの作品、
こちらは一転、とても静かな雰囲気です。

大山エンリコイサム

キャンバスにひび割れ塗料を塗り、壁のような凹凸を再現、
その上に、メカニカルペンシルで無数の
「クイック・ターン・ストラクチャー」を描きこんでいます。

大山エンリコイサム
細いペンシルの芯をさらに削って微細な線を出しているそうです。

作品ごとに線の濃さが違っていますが、
力の入れ方を微妙に変えて線を描くという、まさに超絶技巧。
この線も全く迷いがなく、
フリーハンドなのに均一の太さで描かれています。

「FFIGURATI #133」とは対照的な作品に見えますが、
同じように緊張感と強さを湛えています。

新しいグラフィティの姿。

大山エンリコイサム『Present Tense』
2016年8月20日〜9月24日
Takuro Someya Contemporary Art