あいちトリエンナーレが開幕しました。
 そのコンセプトは、「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」
芸術監督・港 千尋さんは、
 ボイジャー探査機に搭載された「Golden Record」を引用しています。
 Golden Recordには、地球の生命や文化に関する音や画像が記録されていて、
 地球外知的生命体が見つけた時に、地球の存在を伝える役目を担っています。
今回のあいちトリエンナーレは、現代の芸術のGolden Recordとなるべく、
 美術にとどまらず、映像、音楽、パフォーマンス、そしてオペラの新作まで演じられます。
地球外の生命体にも、そしてもちろん多くの地球の人たちにも伝えたい見応えのある作品の数々。
圧巻は大巻伸嗣さんの『Echoes Infinity』。
 顔料を使ったステンシルで、部屋の床一面花を咲かせています。
 ふわっと浮き上がった花々、優しさが溢れています。

シャンパングラスに入った顔料カクテルも、地層を見ているような美しさ。

そして、この作品の模様は、トリエンナーレのヴェロタクシーにも活かされています。
三田村光土里さんの『Art & Breakfast』、
 2006年から世界各地で行なっている滞在制作アートプロジェクト。
 朝食はその土地の文化と伝統を顕著に反映していて、いろいろな気付きをもたらします。
 その気づき をもとに、そこで見つけた材料でインスタレーションを作り続けるプロジェクト。

ハッとさせられるメッセージと、絶妙なインスタレーションがとても楽しい。
愛知県出身の佐藤翠さんは、姿見など大型の鏡に描いた作品をメインに展示、
 暗い空間に漂う光と色、
 大巻伸嗣さんの作品とは表裏を構成しているかのようです。

 佐藤翠さんの展示よりもさらに暗く、ほとんど光のない部屋、
 ぼんやりと浮かぶ一匹の鹿、田附勝さんの『kuragari』。
 人間が灯りを使うよりも前、獣と人間、死者と生者は、暗がりのなかで共にいた、
 その記憶を呼び覚まそうとする作品。
壁一面に貼られた樹木のフロッタージュ、岡部昌生さんの『被爆樹/被曝樹』。
 「被爆樹」は、広島の爆心地から2 km圏内で被爆した樹木、
 75年は草木は生えないと言われた広島で、これらの樹木は再び芽吹いたのです。

「被曝樹」は、福島で被曝した樹木、こちらは、今もなお高濃度の放射線を浴び続けています。
 中には除染のため、伐採された樹木もあります。

人間が見出した恐るべき力の、まさにGoleden Record。
今回のトリエンナーレが開催されている、名古屋、岡崎、豊橋の
 3つの地域それぞれで展開している参加型プロジェクト、
 ジョアン・モデの『NET Project』。
 参加者は、自分の好きな色の紐を好きな長さにして、
 ネットを拡張していきます。

それは、神経細胞が増殖していくようでもあり、
 都市が作られていくようでもあります。
 このネットは、やがて国境を越え、地球をも飛び出し、
 地球外生命ともつながりを持つ日が来るかもしれません。
あいちトリエンナーレ2016
 虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅
 2016年8月11日〜10月23日










