ARATANIURANOで坂本夏子さんの個展が行われています。
彼女の作品「靴紐を結ぶ風景」、
平面でありながら四次元をも表現しています。
格子状の壁で囲まれた空間、その壁は所々で途切れていたり、
遠近感がおかしくなっていたり。
壁が時々刻々とその位置を変え、
一瞬目を離すと、全く違う絵になっているかのような
不思議な動きを感じます。
「インターステラー」でクーパーが突入したワームホールのようです。
グリッドの一つ一つにどんな色を置くかで
関係性がガラッと変わります。
動きのある壁を表現できるように計算して色を配置すると
坂本は言います。
一人の女性が靴紐を結んでいる姿にも、
迷宮を彷徨い続けた時間が感じられます。
クーパーは、ワームホールの中で娘にメッセージを伝えることができました。
この絵の女性は、果たしてミッションを達成することができるのか、
彼女の冒険は今も続いています。
展覧会のタイトルは『画家の網膜』。
坂本夏子は次のように述べています。
「描くことは絵の内側に住むことですが、
そこでは二次元でも三次元でもない場所に身体が
適応させられていくような感覚があります。
その、 絵にしか起こりえない空間は網膜の経験
を不思議に歪めていくような気がします。」
網膜は二次元ですが、2つの目の視差と生活上の経験から,
脳が立体であると判断しています。
画家の網膜、そして脳は、捉えた信号を不思議な次元に投影するからこそ
その人にしか描けない絵を創ることができるのです。