物語を紡ぐ – ダニエル・アーシャム 『My First Show in Japan, Year 2044』

ダニエル・アーシャム

NANZUKAでアメリカ人アーティスト、
ダニエル・アーシャムの新作個展が開催されています。

ギャラリーに入ると、正面に男が立っていてこちらを見ています。
近づいてみると、頭、両腕、両脚の彫刻が、
本物の人間のように配置されています。
所々に金属片が埋め込まれていて、壊れたロボットのよう。

ダニエル・アーシャム
これは、「Fictional Archeology」(フィクションとしての考古学)と呼ぶシリーズ、
遠い未来に発掘された化石を表現しています。

古代、ヴェスヴィオ火山の噴火により、瞬時に地中に埋もれた町、ポンペイ。
多くの人が生き埋めになり、その後肉体は朽ちてなくなり、
火山灰の固まりの中に、人型の空洞ができていました。
そこに石膏を流して遺体の姿を再現しています。

今回の作品は、ハイドロストーン(特殊石膏)に黄鉄鉱、
粉末黒ガラスを加えて作られていて、ポンペイの遺跡を思わせます。

男の化石の隣には、ラジカセ、カメラといった機器の化石。
これらもハイドロストーンで作られていますが、
とても精巧にできていて所々朽ち、
長年地中に埋もれていて、発掘されたばかりという感じを受けます。

ダニエル・アーシャム

ダニエル・アーシャム

ダニエル・アーシャム
ダニエル・アーシャムは、考古学者の発掘作業に同行したことがあります。
過去に何が起きたのかを明らかにする学問ではあるけれど、
発掘した物から仮説を立てる作業は、
ある意味フィクションを構築する作業でもあると気づき、
「Fictional Archeology」のコンセプトを創出しました。

ですから、私たちは彼の作品を観ることで、
何万年もの未来に旅し、2010年代の物語を創り出すことが求められます。

今やスマホで写真を撮ることが多くなったものの、
なおかつ使い続けられているカメラ、
そして、もはやほとんど使うことのなくなったラジカセ、
この組み合わせは、様々な物語を紡ぐことができるように思います。

同時に、長く使い続けられる物と、
すぐに置き換わってしまう物の違いは何なのかを
考えさせらえる展示でもあります。

ダニエル・アーシャム

ダニエル・アーシャム 「My First Show in Japan, Year 2044」
2016年3月12日〜4月16日
NANZUKA


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