生産とアート – サイモン・フジワラ『White Day』

サイモン・フジワラ

 

東京オペラシティアートギャラリーで、サイモン・フジワラの個展が開催されています。
サイモン・フジワラ『White Day』
床に白い絨毯をはり、高級感のある空間を作っています。
最初に出会う作品はHARVEY NICHOLSの袋に入ったファー
White Dayの贈り物を思わせます。

 

サイモン・フジワラ

広い部屋に入ると壁は使われておらず、
作品は床に置かれていたり、天井から吊るされていたり、
立体感のある展示。

 

サイモン・フジワラ

そして、ガラス張りの小部屋が設置され、中で作業が行われています。
そこではファーの毛をバリカンで刈っています。

 

サイモン・フジワラ

サイモンは、作品制作にあたって丹念にリサーチをしていますが、
ファーの毛を刈り裏地を剥がすと、皮の継ぎ目が現れることを発見しました。
その継ぎ目のラインはコートごとに違っていて、
抽象画のように美しいのです。

この皮を木枠に貼り、「驚くべき獣たち」の作品が誕生します。

 

サイモン・フジワラ

 

 

サイモン・フジワラ

 

サイモン・フジワラ

 

White Dayはもともと、商業的な目的によって日本で生まれたイベント。
サイモンはこの点に着目して展覧会のタイトルにしています。
そして毛皮のコートは、White Dayの贈り物の頂点のような存在です。

そのコートの皮の継ぎ目がアートになるのは、
毛皮を提供してくれた(犠牲になった)動物たちにそれぞれ個性があるから。
動物たちが、生息環境に合うように身につけてきた毛皮の機能と美しさを、
人間は未だ再現することができず、大量生産できないことを意味しています。

一番奥の部屋には女性像「レベッカ」が、

同じポーズでいくつも立ち並んでいます。

 

サイモン・フジワラ

 

サイモン・フジワラ

 

「レベッカは、2011年のロンドンの暴動に参加して逮捕された若者、
更生プログラムの一貫として、中国の生産工場と兵馬俑という大量生産の場の見学を課され、
あげくの果てに、全身の型をとられ...」
というストーリーがつくと、
多く作るほどアートとして成立するようになります。

一方、デパートでファーを纏ったマネキンは、アートとは認識されていません。

大量生産とアートの価値、その違いが
ほんのわずかの揺らぎにあることを感じさせる展覧会。

 

サイモン・フジワラ ホワイトデー
2016年1月16日〜3月27日
東京オペラシティアートギャラリー