新国立劇場でオペラ『椿姫』の新制作が上演されています。
「乾杯の歌」をはじめ、美しい曲にあふれるオペラ。
19世紀のパリ社交界、高級娼婦ヴィオレッタ(ベルナルダ・ボブロ)は、
肺の病で先が長くないことを悟っています。
ある日のパーティで、青年アルフレード(アントニオ・ポーリ)に告白され、
社交界から離れ、郊外で暮らすことを選びます。
しかし、アルフレードの父ジェルモン(アルフレード・ダザ)によって
別れさせられてしまうという展開。
舞台の特徴は、床と壁が鏡面になっていること、
照明も全体的に暗くしていて、
無機的な感じのする空間になっています。
一方、全幕を通じて登場する「ピアノ」、
鏡とは対照的に有機的な柔らかさを見せています。
このピアノは実際に19世紀に使われていたものだそうです。
今回の舞台は、このように時代を感じさせるものと
時代を超えたものが混在しています。
衣装にも反映されていて、男性の衣装は19世紀中頃に流行ったデザイン、
一方、女性の衣装は、19世紀より古いデザインから近未来的なものまで様々、
全ての衣装が異なるデザインになっています。
色とりどりのドレスが舞台を舞い、鏡の壁に映るのは幻想的。
でも、もっと照明を明るくして、
ドレスとともに光も舞うようにしたら
一層華やいだ雰囲気になったのでは?とも思います。
演出のヴァンサン・ブサールは、敢えて時代をごちゃ混ぜにしたと言います。
男性社会の中で翻弄されながらも、力強く生きようとするヴィオレッタの姿が、
時代や国を超えて共通しているのではと考えたからです。
そんな時代を超える『椿姫』へのチャレンジですが、
ヴィオレッタ(ベルナルダ・ボブロ)も
アルフレード(アントニオ・ポーリ)も
歌声が美しく、容姿も役柄にぴったりで、
物語の中に観客を引き寄せる力がありました。
一部舞台がオーケストラピットまでせり出していて、
幕が下りても、ヴィオレッタの姿だけ私たちの側にあるという演出がにくい。