美術館の展覧会の楽しみの一つに、
異なる作家の作品を並べて、その関係性を見るということがあります。
作品の組み合わせと、そのコンセプトから
どれだけ新しい関係性を見せることができるか、キュレーターの腕の見せ所。
東京都現代美術館で開催されている
開館20周年記念MOTコレクション特別企画第2弾『コンタクツ』は
そんなキュレーターの思いにあふれた展覧会。
世代や活動領域、手法などが異なるアーティストの作品を組み合わせて
14のストーリーを構築しています。
ジュゼッペ・ペノーネと福田尚代の組み合わせによる『書物と言葉』、
書物と人間との関係について語りかけてきます。
ジュゼッペ・ペノーネの「木の書物」、
大きな木を反面を残して削っていき、ある時点の年輪にそって丸く切り出すと
若かりしころの幹が姿を現し、巨大な本を開いたような造形ができます。
そこに刻まれている情報は、木が生きてきた長い長い地球の歴史。
巨大彫刻に対比するように並べられている、福田尚代さんの「ふたたび、緑の方へ」。
文庫本がいろいろな形に切り出され、その一部にコケのような緑が生えています。
木は本に姿を変え、人々に教養や楽しみを与えてくれます。
そしてさらに長い年月を経て、緑に帰っていく。
情報をとるだけなら、電子的に手軽にできるようになりましたが、
書物には、優しさや不思議さ、重厚感といった数多の表情をもっています。
人々に愛される多様な表情は、
悠久の時間の中で育まれることを感じさせるキュレーション。