新国立劇場で上演された『パルジファル』
舞台の奥から手前に稲妻のようにジグザグに設置されたパネル。
このパネルが白く光りを放ち、その周りは漆黒の闇。
パネルは、いろいろな映像も映し出す。
氷河のようにゆっくり白い光が流れるかと思えば、
蜷川実花の写真のように原色の鮮やかな光が乱舞したり。
このパネルがメインの舞台ですが、
もう一つ、「メッサー」と呼ばれる平均台のような細長い装置が現れる。
こちらは、太陽の表面のように赤い光が流れている。
そして、歌手を乗せたまま、猿之助のスーパー歌舞伎ばりに宙を舞う。
オペラ歌手も大変!
メディアアートな舞台とワーグナーの雄大な音楽が響き合う。
聖杯王アムフォルタス(エギルス・シレンス)は、
聖槍を奪われ、その槍で傷を負いヘロヘロな状態。
無垢な愚者・パルジファル(クリスティアン・フランツ)を
聖界と魔界を往復する女クンドリー(エヴェリン・ヘルリツィウス)が誘惑しキスをすると、
パルジファルに智が備わり、アムフォルタスの苦痛の意味と自分の使命を知る。
パルジファルは聖槍を取り戻し、アムフォアルタスは救済される。
メインの登場人物は6人、
その中で、紅一点クンドリーのエヴェリン・ヘルリツィウスが素晴らしい!
幕ごとに全く異なる表情や振る舞いを見せる。
特に、二幕、パルジファルを誘惑しようと
妖艶で激しく迫る姿は、まさに魔物が取り付いたよう。
彼女の誘惑を振り切ったパルジファルは、
それはそれで徒者ではない。
一転、三幕では、洗礼を受け、
永遠に聖界と魔界とを往復する運命から解放され、
静かな境地にたどり着いた穏やかさを感じさせる。
声楽だけでなくバレエも習っていたというエヴェリン・ヘルリツィウスならでは。
シーズン開幕にふさわしい祝祭劇!