炭の黒は潔い色だと感じる。
この炭を使った、大平龍一さんの個展が
NANZUKA contemporary art galleryで行われていた。
壁二面にぴしっと配置された黒、
寺のお堂の中にいるかのような荘厳さや
緊張感が伝わってくる。
それぞれの作品のよく観ると、
彫刻が施され、固有の世界が表現されている。
この作品を毎朝観ることができたら、
引き締まった日々をおくることができるに違いない。
一方、立体の作品、
マーク・クインのケイト・モス像のように
大胆なポースをとってランボルギーニにまたがる女性、
打ち出の小槌にまたがる女子学生など
コミカルでちょっとエロティック。
これらの彫刻作品も炭と化している。
黒い彫像たちは
蔵から発掘されたかのように
時代の向こうに私たちを誘ってくれる。
大平龍一は、この個展に『絶景』というタイトルをつけた。
本来絶景と言われると、色彩豊かな光景を思い浮かべる。
しかし炭の黒は、ブラックホールのように
周りの色を吸収していき、黒しか残さない。
色の消えた中でさえ浮かび上がってくる世界
それこそが本当の絶景!
大平さんの打ち出の小槌
新潟の里山十帖にも鎮座している。
こちらは、玄関の間を占拠する巨大な小槌、
それを小さな大黒様が支えている。
新しい宿の繁栄を願う
こちらもまた絶景!