KANA KAWANISHI GALLERYで行なわれている
『都市—Cityscapes/Residences』、
4人のフォトグラファーによるグループ展。
それぞれ独自の視点で都市を切り取っています。
ジェレミ・ステラさんはフランス人で長年日本に住み、
著名な建築家が設計した住宅を撮影しています。
建築系の雑誌に出る住宅の写真は、
そのデザインが際立つように撮影されていて、
あまりごちゃごちゃしたものは写っていません。
ところが、実際に人が生活していれば、
自動車や自転車が置かれ、ゴミも出るものです。
ジェレミ・ステラは、そんな住宅本来の姿を捉えています。
おまわりさんが通りかかるまで待って、その建築のベストショットを撮っています。
彼の作品を観ていると、凄いデザインの建築は、
街に溶け込むことによって、その存在感が際立つことがわかります。
水木塁さんは漆工芸科の出身です。
ピカピカに磨いた漆器は、鏡のように周りのものを映すことに気づき、
メディアアートの制作を始めたそうです。
動物園の鳥の写真を撮り、スケートボードのボウルにプロジェクションして、
歪んだ像を再度撮影するという手法をとっています。
動物園の鳥もスケートボードも、高くジャンプしたとしても
同じフィールドに着地する、それは都市の特徴を表していると言えるでしょう。
菊地良太さんはフリークライマーで、普通の人が登らない
街灯や時計塔のてっぺんに登って、自分の姿を撮影しています。
一度その作品を観ると忘れられなくなるアーティストの一人です。
高いところに登って撮影するのは、
ただ単にアクロバティックな能力を見せたいわけではありません。
多くの人が、普段あまり関心を持たない都市の造形に自分自身が侵入することで、
気づいてもらおうという意図があります。
今回のメインの作品は、道路の突き当たりに置かれた標識に登って撮影しています。
なんでもない場所ですが、彼が立っている標識のところで道路が分断され、
向こうに道があるのに真っ直ぐ進めなくなっています。
標識のこちらと向こうでどこか世界が違っていることを感じさせます。
4人目は ミナミ・ノリタカさん、シカゴ在住のアーティスト。
黒川紀章設計の 中銀カプセルタワービル、
メタボリズム運動の象徴でもあったこの建築の部屋を撮影してきました。
1972年に竣工した時は、未来の建築と言われました。
40年を経て、建て替えか保存かが議論されるまでになっていますが、
今もなお、私たちが夢見た未来を感じさせる建築、
こんな建築は東京の中でも稀有な存在でしょう。
ミナミ・ノリタカさんの作品からは、
中銀カプセルタワーの魅力を存分に感じることができます。
今回のグループ展、4人がそれぞれクールに東京を表現していて見ごたえ満載です。
2015年11月21日〜12月26日
KANA KAWANISHI GALLERY