スーパーリリアリズム – 上路市剛『San Giorgio』

上路市剛

六本木ヒルズA/Dギャラリーで行われている『TENGAI 2.0』
アーティストの天明屋尚さんがキュレーションしたグループ展。

『TENGAI』とは、「奇想、天外より堕つ。」
(普通の人が思いつかないような考えが浮かんでくる。)
の言葉に由来し、江戸時代の絵師たちの「奇想」を現代に甦らせ、
権威的な美術のあり方を打破しようという意図で企画されています。

ギャラリーに入るとまず飛び込んでくるのが、
スーパーリアルな胸像たち。
上路市剛(かみじ いちたか)さんの作品です。

西洋の著名な胸像をもとに、
まるで生きているかのような人形を創り出します。
MichelangeloGiuliano de Medici
San Giorgioの3体が展示されています。

目玉は別に制作してはめ込んでいたり、
髪の毛や髭は、人毛を一本一本植毛したりと、
限りなく人体の構造に近づけているので、
スーパーリアルな造形を創り出すことができるのでしょう。

上路市剛
上路さんのFacebookに制作意図が書かれています。
学生時代に学んだ人体彫刻はできあがったものが
人体とはかけ離れていることに違和感を感じ、
このようなリアルな立体を創るようになりました。

江戸時代後期から明治にかけて、生人形(いきにんぎょう)と呼ばれる
スーパーリアルな細工人形が作られたそうですが、これに通じるのです。
まさに、TENGAIのコンセプトにぴったり。

西洋の彫刻を人形化させることで、
彫刻を別の次元へ引きずり出したいと言います。

石膏の胸像と、このようなリアルな像とでは、
たしかに受ける感じがかなり違います。
リアルな像と対峙すると、怖れを感じ身震いしてしまうほど。
人の形の奥に、魂を感じるからに違いありません。

『TENGAI 2.0』
8/7〜8/23 @六本木ヒルズA/Dギャラリー


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