ヴァンジ彫刻庭園美術館で、ドイツとイタリアで活躍する
クリスティアーネ・レーアさんの個展『宙をつつむ』が行われています。
日本の美術館での初めての個展。
彼女は、身近にある植物の茎や種子を使って作品を作っています。
種子たちが創る宇宙、かよわくて息を吹きかければ飛んでいってしまいそう。
緑に囲まれたヴァンジ彫刻庭園美術館によても似合っています。
自然の造形を私たちは美しいと感じますが、
彼女の意図は、自然の美しさの表現ではないようです。
使っている植物の名前は重要ではないといいます。
油彩画を観るとき、専門家でもなければ、
使われている絵具のメーカーや品番などを気にすることはありません。
レーアは、絵具の代わりに種子を使っているのです。
意図しているのは、空間に自由なラインをひくこと。
植物はそれぞれの生存のために獲得した固有のラインを持っています。
それは人間の思考を遥かに超え、そして多様です。
しかも有機的な構造になっているので、
新たに種子を加えれば、
どんどんラインを拡張することもできます。
種子によるミクロな世界、
細くやわらかなラインだけれど、
いつしか宙に届き、宙をつつむことさえできるかもしれない、
そんな夢にあふれた作品です。