アメリカ発の「アート思考」によるイノベーション:Japan Innovation Review「良書抜粋」第4回公開

アート思考の技術

 

JBpressが運営する「Japan Innovation Review」の「良書抜粋」で、『「アート思考」の技術』第4回の記事が公開されました。今回は、「グーグル、3Dプリンター、SNS、アメリカ発のイノベーションの威力とは 革新的なコンセプトを生み出す米国企業の「アート思考」」というタイトルで、米国発の「アート思考」によるイノベーションに焦点をあてています。

 

「アート思考」とは「自らの興味・関心を起点に、既存の常識にとらわれない斬新なコンセプトを創出する思考」のことで、日本でも高度経済成長期には、自分起点のイノベーションが数多く生まれていました。しかし、90年代後半に、「選択と集中」戦略がとられるようになり、自分起点よりも、ニーズの顕在化している領域に力を入れるようになりました。

 

一方、アメリカでは、最近も自分起点の画期的なイノベーションが生まれ続けています。

 

Google検索エンジンの誕生

 

グーグルの創業者、セルゲイ・ブリン(Sergey Mikhailovich Brin)とラリー・ペイジ(Larry Page)は、1990年代半ば、スタンフォード大学の学生のときに、「多くの支持を集めている(被リンクが多い)サイトのランクをあげることで、人間の脳と同じように機能する検索エンジンができる」というコンセプトを考えつきました。

 

当時は、検索は事業として注目されておらず、誰も特許を買ってくれませんでした。そこで自分たちで事業を始めたのですが、Googleの世界検索エンジン市場シェア率は、2022年6月時点で91.88%にのぼるほどに成長を遂げています。

 

3Dプリンターの革新

 

3Dプリンターを最初に実用化したのは、3D Systems 社の共同創業者、チャールズ・ハル(Charles W. Hull)でした。ハルは工業用の光硬化性樹脂を硬化させる紫外線発光装置を製造している会社で仕事をしていました。

 

テーブルの上に樹脂を塗り硬化させる作業をしている中で、コーティングを薄いプラスチック片と見て、これを積み重ねることで固体形状を作ることができれば、簡単にプロトタイプを作ることができるのではと考え、3Dステレオリソグラフィーの開発に成功しました。ハルは、1986年3D Systems 社を設立しましたが、いまや多種多様の3Dプリンターが開発されています。

 

ソーシャルネットワークサービス(SNS)の誕生

 

現在使われているSNSの基本的なスタイルを取り入れ、多くのユーザーを獲得した最初の事例は、2002年に開設されたFriendster といわれています。Friendster を創ったのはジョナサン・エイブラムス(Jonathan Abrams)です。

 

エイブラムスは、カナダのNortel 社で働いた後、Netscape 社に移り、シリコンバレーで働くことになりました。カナダからシリコンバレーに引っ越したとき、誰も知り合いがいませんでした。そこで、多くのイベントに参加してネットワークを構築しなければなりませんでした。

 

友人、同僚、隣人、家族など、実生活で知っている人たちの社会的背景を、オンラインの世界で反映させることができたら、いちいちイベントに行ってネットワークを作る必要もなくなると考え、プロトタイプを作成。実名と写真を登録し、実際の知人をネットワークに加えるという、後にSNSの基本となる革新的なコンセプトを提示しました。

 

Friendsterは開設から数カ月で300万人を超えるユーザーを獲得しました。彼が考えたコンセプトは、FacebookなどのSNSに引き継がれています。

 

「アート思考」の重要性

 

90年代以降の日米の成長の差は、自分起点のイノベーションが起きているかどうかが大きく影響しているのではないでしょうか。
今一度、私たちも自分起点のイノベーションを起こせるようにしていきたいものです。そのためにも「アート思考」を身につけることが必要だと思います。