AOYAMA Unlimited 第 6 回は志村 信裕さんをお招きして開催します。
志村さんは、今年 1 月から 3 月にかけて開催された「21st DOMANI 明日展」で映像作品を出品し、
6 月にはフランスでも上映会とトークイベントを行いました。
最近は、動物と人間の関係を丁寧にリサーチして、
人々の生活文化や歴史をあぶり出す作品を制作しています。
その作品では、私たちにとって身近な動物たちが、違った姿で見えてきます。
今回の AOYAMA Unlimited では、作品上映とともに、
志村さんに作品の生まれる背景やエピソードを語っていただきます。
トークゲストとして、DIC 川村記念美術館学芸員の光田由里さんがお越しくださる予定です。
また、志村さんからは、次回作の構想を共有していただいた上で、
みなさまへのスペシャルなご提案も予定されています。
7 月 13 日からの千葉県立美術館での個展を控え、
着実に新しい道を切り開く志村さんの作品をまとめて鑑賞できる特別な機会となります。
志村 信裕さんと過ごす一夜限りのサロン・イベント。どうぞお見逃しなく!
◎イベント概要
AOYAMA Unlimited 現代アーティストと過ごす夕べ
vol. 6: 志村 信裕
日時:2019 年 6 月 29 日(土)19:00-20:30
場所:void+ (東京都港区南青山 3-16-14 1F)
主催:void+, E&K Associates
協力:Yuka Tsuruno Gallery
◎プログラム
見島牛 Japanese Cattle
2015 年 /日本 / スーパー8 から HDV 変換 / モノクロ / サウンド / 20 分
ルーブルの羊 Mouton du Louvre
2019 年/ フランス / スーパー8 から HDV 変換 / カラー / サイレント / 1 分
Nostalgia, Amnesia
2019 年 / フランス・日本 / HDV / カラー / サウンド / 45 分
トークゲスト: 光田由里さん(DIC 川村記念美術館 学芸員)
◎アーティストによるステートメント
省察:作品の作りかた
作品が変わりましたねと、最近よく言われる。
作品自体が変わったのは確かだけど、一番大きく変わったのは作りかたである。
ある時を境に、自分の作品の作りかたを大きく変えた。
簡単に説明すると、外部からの依頼を受けないで作品を作りはじめることにした。
それまでずっと、依頼を受けたものしか制作してこなかったことの方が驚くべきことだが、
何もない地点から作品を作りだすことが自分にできるとも思っていなかったのも事実だった。
主題は自分の内側になくて、つねに外側にあったのだ。
表現がデザイン的だと評されたことも少なくないけれど、そう言われるのも無理はない。
それでもある展覧会から出品を要請され、与えられるテーマや展示空間の特性は、
新たなを作品をつくる上での端緒となり、
自分でも思い描いたこともないイメージやモチーフを引き出してくれた。
キャリアの初期はこのやり方で良かったのだろう。
ただし気がつくと(それには7 年ほどかかる)、自分に与えられる状況、
お題に応えることが仕事の全てになってしまったことに対する疑問と限界を感じ始めることになる。
幸いにもその頃になると、生活の変化や歳を重ねた経験が肥やしとなり、
ようやく自分の中からも表現したい主題というものが芽生えてきていた。
機が熟したのか、2014 年に『見島牛』というスーパー8 で撮影した一本の映像作品の制作を開始し、
翌 2015 年に完成する。
これまで手がけてきたインスタレーション作品から、
身辺にある社会的な関心を作品内に投影するためにドキュメンタリーの手法を取り込んだことで、
作品形態は大きく変わらざるを得なかった。
当時依頼されていた展覧会の仕事と並行しながら、
ひっそりと実験をするように自分のために制作する時間は至福だったし、
自分の中に眠っていた知らない一面をかたちにできるのは快感だった。
しかし、誰にも頼まれていないので制作費などはもちろん無く、
制作時間を確保する以上に、制作資金を集めることが自分にとっては最大の障壁である。
毎回その時々のやりくりや援助を受けて、何とか作品を完成させてきたけれど、
この先もこのような作りかたができるのかは分からない。
それでも辛うじてつづいた作家活動の延長線で辿り着いた、
現在取り組んでいる主題は大切に育てていきたい。
そのような想いで、牛から始まって羊に発展していった動物シリーズの三作目の準備に
いよいよこれから取り掛かる。
これまでの作品を観てもらえれば分かると思うけれど、主題にしているのは動物の姿そのものではなく、
動物と人間の関係を通して見える社会の推移であり、周縁的な事象に対する個の記憶だ。
近・現代が辿ってきた歴史への問い直しが生まれ、異なる歴史学を横断できるような、
生き生きとした世界の反映を見てみたい。
とにかく時間がかかることだけは間違いないけれど、作りたいものだけは(幸いにも)まだ沢山ある。
当日は、次回作の構想もお話します。
◎参加費
・事前予約券:5,000 円 / 当日券:6,000 円(サイン入りプログラム、ドリンク付き)
※参加費は、イベント開催にかかる費用分を除き、アーティストの支援に使わせていただきます。
◎予約方法
予約サイトから、お申し込みください。
◎プロフィール:志村 信裕 (SHIMURA, Nobuhiro)
1982 年東京生まれ。現在、千葉県在住。2007 年武蔵野美術大学大学院映像コース修了。
2016 年から2018 年まで文化庁新進芸術家海外研修制度により、
フランス国立東洋言語文化大学(INALCO)の客員研究員としてパリに滞在。
身近な日用品や風景を題材にした映像インスタレーション作品から、
近年では各地でのフィールドワークを行いながら
ドキュメンタリーの手法を取り入れた映像作品を制作。
牛や羊など、人間と動物の関係を主題にしながら、
独自の視点で周縁的な事象や記憶に光をあてるプロジェクトを今後も継続して手掛けていく。
近年の主な個展に「Land」(ユカ・ツルノ・ギャラリー、東京、2019 年)、
「物の気」(ウォーナンブール美術館、オーストラリア、2018 年)、
グループ展に「21st DOMANI・明日展」(国立新美術館、東京、2019 年)、
「The world precedes the eye」(ICA シンガポール、2016年)、
「六本木クロッシング2016」(森美術館、東京、2016 年)、
「未見の星座〈コンステレーション〉-つながり/発見のプラクティス」(東京都現代美術館、2015 年)
など国内外多数。今後の予定として千葉県立美術館での個展開催が控えている。
◎関連情報
「千葉の新進作家vol.1 志村信裕 ‒ 残照 – 」
会期:2019 年7 月13 日~9 月23 日
会場:千葉県立美術館 (千葉市中央区 中央港1 丁目10 番1 号)
◎AOYAMA Unlimited
Web: www.eandk-associates.com/category/aoyama_ul
Facebook: www.facebook.com/aoyamaunlimited
お問い合わせ先: aoyama_ul@eandk-associates.com
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