渋谷ヒカリエで1月2日から15日まで行われた「Contemporary Art Eye vol. 13」で神楽岡久美さんの作品が展示されていました。
美しい身体を求めて
私たち人間は、とかく美しくなりたいとか、かっこよくなりたいとか思うものです。化粧をしたり、おしゃれな衣装にみを包んだり、ライザップに通って食事と筋トレで内面から改造したりといろいろな努力をしています。
神楽岡さんは、古来から私たち人間がどういう姿を美しいと感じてきたか、文化人類学の文献などをリサーチしました。そして、脚、指、首などが長いことが美しいと思われていたこと、美しいことは同時に強いことでもあったことに気づきます。
そこで、人間の身体のいろいろなパーツをextendする装置の開発を考えました。
展覧会では、装置のアイデアを描いたドローイングとプロトタイプが展示されています。
このプロトタイプが凄いのは、実際に装着することができ機能するところ、モデルが装着した動画も観ることができます。
指の伸ばす装置はとても美しくシザーハンズのよう。
長く伸びた金属の輝きに、これを装着したらかなり痛そうです。
現代アートならではの発想
神楽岡さんは、機能する作品を制作して、新たなビジョンを提示しています。
身体に装着して機能を発揮するものは、メガネや義足のように医療やスポーツの分野で制作されているものが多くあります。現代アートとして制作するからには、他の分野の人とは異なる視点でコンセプトを提示する必要があります。美しい身体について文化人類学や歴史をリサーチして、extendというコンセプトに辿り着きました。
他の分野の人がやらないことを考えるのはとても大切で、ここで提示された新たなビジョンに、社会が後からついてくることもあり得ます。
美しい義足をデザインしている山中俊治さんは、「プロトタイプは単なる実験機ではなく、先端技術が将来もたらすであろう価値を体験可能な形にした装置である。ビジョンや課題を人々と共有するメディアとして機能する。」と語っています。
斬新なビジョンに共感してくれる人が現れれば、社会実装へのスピードが加速します。
現在は暗闇フィットネスが流行っていますが、次は、Extending Gymに皆が通うようになるかもしれません。
開催概要
Hikarie Contemporary Art Eye vol.13 小山登美夫監修
会期:2020年1月2日~1月15日
会場:渋谷ヒカリエ 8/CUBE 1, 2, 3
関連リンク
山中俊治「未来を拓くデザインとプロトタイピング 価値創造デザイン推進基盤の活動について」 生産研究 71巻3号(2019)p.276-279