星座は約5000年前にメソポタミアで考え出されたといいます。
現在、都会では一等星か二等星ぐらいしか見ることができませんが、
5000年前の夜空には無数の星が輝いていたことでしょう。
私たちにとって、無数の点をバラバラのまま認識するのは難しく、
明るい星を結んで星座にすることで、時間、季節そして自分の位置を測定できるようになったのです。
「Signals, mapping」
ANOMALYで開催されている坂本夏子さんの個展、
メインの作品は、大きなキャンバスに点と線を描いた「Signals, mapping」
星座にも見えるし、地図のようにも見えます。
私は、神経ネットワークかなと思いました。
背景の赤味がかったグレーが独特で、その上にいろいろな色と大きさの点と線、
自然界で見られるような複雑さが魅力的。
このキャンバスの大きさは、彼女が手を伸ばしたときの体の長さと合っています。
そんな偶然の大きさの中に、彼女が日々出会った情報を点としてプロットしています。
点の配置は、サイコロを振って決めるようにランダム。
そして、数多の点のいくつかを線で結んでみる、
メソポタミアの人たちが星を線で結んだように。
線でつなぐと意味が生じます。星座、地図、神経ネットワーク…
神経ネットワークに例えると、神経細胞の一つ一つが自分の作品ですと坂本さんは言います。
この展覧会は、ペインティングだけでなく、ドローイングも立体作品も多数展示されています。
作品ごとにコンセプトや題材が違っているので、
それぞれを制作しているときに働く神経が違ってくるのでしょう。
「Signals, mapping」は、この展覧会における「思考のマップ」ということもできます。
もう一度「Signals, mapping」を観てみましょう。
点と点を線で結ぶとき、「人は見たい輪郭を見つけてしまう」と坂本さんは感じたそうです。
ここが人間の脳の面白いところ。
星座を考え出した人たちも、同じように空に輪郭が見えたにちがいありません。
だから、カシオペア座のWは、日本でも同じようにやまがたぼしなどと呼ばれていました。
点と点を結ぶ
無数に存在する点の中から二つを選んで線で結ぶ、
それはとてもクリエイティブな行為、いろいろな場面で遭遇します。
ボルダリングでは、どのホールドを使うかコースを描いてチャレンジします。
ナイスなコースを描くことができれば速くのぼることができます。
事業の場でも、異なる点と点をつないでみると、
思いもよらぬイノベーションにつながることがあります。
だから、できるだけ多くの点に触れることが必要といいます。
スティーブ・ジョブズの、かの有名なスタンフォード大学でのスピーチでも次のように語っています。
you can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backward. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever.
無数の点の中から、自分にとって最も美しい輪郭を描いた坂本さんの作品、
そこには人間の創造性の本質が表現されていました。
開催情報
坂本夏子個展 迷いの尺度ーシグナルたちの星屑に輪郭をさがして
会期:2019年6月8日~7月6日
会場:ANOMALY
東京都品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 4F
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