資産評価額が10億ドルを超えるユニコーンといわれる企業には、
芸術系のバックグラウンドをもつ創業者がけっこういると言われています。
これはどういうことを意味しているのでしょうか。
芸術系出身の創業者たち
YouTubeの共同創業者Chad Meredith Hurleyは
Indiana University of Pennsylvaniaのファインアートを卒業しています。
Airbnbの二人の創業者Joe GebbiaとBrian Joseph Cheskyはともに
Rhode Island School of Designのファインアートを卒業、
GoProの創業者でCEOのNick WoodmanはUCSDのヴィジュアルアーツを卒業しています。
「Design in Tech Report 2016」で発表されたデータによると、
約160社のユニコーンの21%に、芸術系のバックグラウンドをもつ創業者がいるといいます。
2000年に私がアメリカにいたときには、
医学部の学生とビジネススクールの学生が組んでベンチャーを作ることが多く、
彼らによるビジネスプランのコンテスとが盛んにおこなわれていました。
このように、ベンチャーというと
テクノロジーの専門家とビジネス系の人が創業するのが一般的だったように思いますが、
いまや芸術系の人がこれだけ入ってきているのはとても面白い現象です。
アーティストの課題意識とテクノロジーへの興味
アーティストは作品を制作するにあたり、
これまで誰も考えていなかったような新しいコンセプトを提示し、創造性を発揮します。
そして、現在の世界に対して、社会的、政治的、そして経済的構造について問いを立てます。
また、彼らは、私たちよりもはるかにテクノロジーに敏感です。
テクノロジーの可能性、私たちの生活に対してどのような影響をもたらすかを
作品を通して提示してくれます。
このようなアーティストの創造性、問題意識、テクノロジーへの興味が、
新しいビジネスの創出に有効であることは容易に想像できます。
かつて、中谷芙二子さんが、環境への問題意識から、
溶剤を使わずに霧を発生させる技術を開発し、
「霧の彫刻」を創り上げ、この技術が実用化に至ったことは代表的な事例でしょう。
ユニコーンにはファンタジーが必要
先日、あるアーティストが、
「ヨーゼフ・ボイスとか、単に課題を提起するだけじゃなくて
ファンタジーがありましたよね。」と言っていました。
中谷さんの作品にも確かにファンタジーがあって、
みるみる立ち込める霧にワクワクさせられます。
夏に気温を下げるために撒く霧とはかなり違いますね。
ファンタジーというとハリーポッターのような小説を思い浮かべます。
私たちは、合理性では説明できないこのような世界に憧れますが、
「人間の心の部分にエネルギーを与えるものであるから」
と武田章利さんは語っています。
物質的に豊かになってしまった現在、
ファンタジーのように心に働きかけてくれる物事を考えられる
アーティストの存在がビジネスの世界にも求められているのでしょう。
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