私たちは旅先で珍しいものに出会うと、
友達や家族のためにお土産を買うことがよくあります。
でもその時撮った写真やエピソードの方がより素敵なギフトになることも。
そんな心理的なギフトを作品にしているのがリー・ミンウェイです。
リー・ミンウェイは台湾生まれ、現在ギャラリーペロタン東京で展覧会を行なっています。
その街の人の知識というギフト
今回の展示「The Tourist」は、リーがツーリスト、
その町に詳しい人がガイドとなってリーに街を案内し、
自分の知識をギフトにするというプロジェクト。
歩いているときに、ツーリストとガイドがそれぞれ撮影した写真をスライドショーで上映、
ツアーのときに入手したグッズなどをボックスに入れて展示しています。
その街に住んでいる人には当たり前でスルーしてしまう景色も
ツーリストだからこそ気づくことがある、
そんな視点の違いも楽しむことができます。
このプロジェクトは2003年にニューヨークのMoMAで最初に発表されました。
このときに制作したテーブルと同じ形のものを制作しています。
このテーブルがなんと行っても美しい。
ギフトを入れすボックスが19個ありますが、中身が入っているのは9個。
リー・ミンウェイが世界中を旅してガイドに出会いギフトを増やしていく、
コスモポリタニズムを感じさせる作品です。
5月16日にリー・ミンウェイと森美術館の片岡真実さんとのトークがあり、
旅に関するプロジェクトを紹介してくれました。
“WHEN BEAUTY VISITS” AT THE VENICE BIENNALE
2017年のベニスビエンナーレ、ジャルディーニの会場の中庭、
蔦に覆われたとても美しい空間にリー・ミンウェイの展示がありました。
といっても、椅子が一つ置かれているだけ。
他の展示を観ていると、係の人から声をかけられ庭に導かれます。
美しい庭の中で椅子にすわってしばらく過ごす、
そろそろいいかと席を立とうとするとギフトの封筒が渡されます。
そこには“When Beauty Visits, Lee Mingwei, Venezia, 2017”の文字。
何か美しい物事に出会ったときに封を開けるように言われます。
ストックホルムの女性小説家が、この封筒を持っていました。
主人公の女性が死んでしまって小説が幕を閉じるという作品を書き上げ、
まさに今だと思い封を開けました。
驚いたことにそこには、友人の女性が事故に会い、
あやうく死んでしまいそうだったところを男性に助けられたという、
小説と非常によく似た話が書かれていました。
封の中の話は、リー・ミンウェイの友達が出会った美しい話。
小説家は、この話を読んで主人公が生き続ける結末に書き換えたと言います。
誰かが書いたギフトが、他の人の人生を変えることがある、
そんな美しいギフト。
リー・ミンウェイのプロジェクトは、
ちょっとした偶然が大きな意味をもってくることを感じされるものが多い。
しかし、偶然とえいども自分が選んでいるのです。
人間は、瞬間を意識的に生きることがとても大切であることを教えてくれています。
ベニスビエンナーレの展示はYouTubeで観ることができます。
私がベニスを訪れた時は雨で、イベントは行われていませんでした。
美しいギフト、欲しかった!
開催概要
LEE Mingwei “The Tourist”
会期:2019年5月15日〜6月26日
会場:ペロタン東京
東京都港区六本木6-6-9
関連リンク
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