1932年(昭和7年)に建てられた京町家を復元したThe Terminal KYOTO。
この部屋と庭を使って、現代アートのグループ展が行われています。
参加アーティストは22名、絵画、写真から立体作品まで多岐にわたり、
日本家屋と作品が絶妙な調和を見せていて見応えのある展示です。
どの作品にもずっと前からこの部屋に置かれていたのではと思わせる存在感があります。
日本家屋にアートを展示する
最近は、町家を使ってアートを展示する機会も増えてきました。
昨年、滋賀県の近江八幡で行われたBIWAKOビエンナーレは、
近江八幡市内の町家を会場に行われました。
ギャラリーや美術館の白い壁は、西洋の文化に由来します。
一方、私たち日本人も、日本家屋に美術品を飾りお客さんをもてなしてきました。
最近の動きは伝統の回帰と言っていいのかもしれません。
ギャラリー空間としての床の間
日本家屋は障子や襖といった可動のものが多く、
アートを設置できる空間は実は限られています。
唯一ギャラリー空間として使われてきたのが床の間です。
掛け軸や花、陶器などの美術品をしつらえる場所、
季節や迎えるお客さんによって飾る品を選んでいました。
今回の展示でも、床の間が最も重要な展示空間、
平面作品と立体作品を組み合わせ、新しい世界観が表現されています。
ブルーノ・タウトは次のように語ったと言います。
地球上、どのような芸術創造を見渡しても、造形美術に使用するものとして床の間程に精緻を極めた形式を創り出したところは何処にもないと云ってよい。
また、床の間の近くには神棚や仏壇が置かれ、
異次元世界への入り口という神聖な場所と考えられてきました。
私たちは、床の間の意義をもう一度捉え直す必要があるのではないでしょうか。
庭というアート
日本家屋のもう一つの特徴は、障子を開けると
庭の景色を見ることができ、アートの役割を果たしていたことでしょう。
今回、印象的だった作品の一つが、坪庭と奥庭に設置された金属彫刻、
庭の植物の緑と、細い黄色の金属とが呼応していて
全く新しい景色を見せてくれています。
記憶を覚醒する場
今回の展示のタイトルはOriginal Memory、
ステートメントは以下の通りです。
感情や思考、そして創造は、記憶を起源に生まれます。記憶の深いところを活性化することで、自分自身を再発見し、新たな自分に生まれ変わることができる。そうしたビジョンのもと、日本の古き良き家屋空間の中に、1人ひとりの内なる記憶を覚醒させる場作りを行います。
日本家屋には、日本人のDNAに記憶として刻まれています。
このような空間に何日か滞在すると、いろいろな記憶が蘇り、創造性が発揮されるように思います。
日本家屋での現代アートの展示が増えてくると、
特徴ある現代アートがもっともっと生まれてくるように思います。
開催概要
室礼展 OfferingsⅤ〜Original Memory〜
会期:2019年4月1日〜5月6日
会場:The Terminal KYOTO
京都市下京区新町通仏光寺下ル岩戸山町424番地
参加アーティスト:
【版画】鈴鹿芳康【木工芸】中川周士
【写真】シーズン・ラオ/北義昭/佐伯剛/大山行男/ジョン・アイナーセン
【金属彫刻】志村高弘/藤原昌樹
【絵画】廣海充南子/榊和也/島上直子/南英登
【陶芸】うらゆかり/山本哲也【ガラス】神代良明/小曽川瑠那
【人形】面屋庄甫【造形】コウノシゲコ【漆工芸】土井宏友
【3D画像システム】森田青樹【挿花】賀幡圓定
関連リンク
日本人の空間認識 – 画のなかとそと 吉野もも/中根航輔 二人展