アートとサイエンスが創る日本酒マジック – 美吉野醸造「花巴」

アートとサイエンスが創る日本酒マジック - 美吉野醸造「花巴」

 

奈良県の酒蔵、美吉野醸造の試飲会にたまたま遭遇、

勧められたのが、「花巴 水もと×水もと」

かなり独特の味で、ワインのような酸味があります。

日本酒は辛口か甘口かといわれますが、酸味を感じることはあまりありません。

しかし、これがなんともいえず美味しい。

 

俄然、美吉野醸造の酒造りに興味がわいてきました。

 

酵母無添加製法

奈良・吉野地方は、多湿な山林地帯で自然に発酵が進む地域、

食品を保存するには、塩漬けにする必要があると言います。

 

自然に進む発酵により、上質な酸が作られます。

そこで酸をいかす酒造りをするようになったそうです。

 

日本酒の酸は、乳酸・コハク酸・クエン酸・リンゴ酸などに由来します。

これらの酸の質感を保ち、さらに旨味を出す発酵、

この2つを達成するために、酵母無添加の製法に辿り着きました。

協会酵母を使うと、酸が酵母の香りに引っ張られるのだそうです。

 

地元の水と米

水は地元吉野の清流、やわらかな水で、

酸味が強いお酒でありながらまろやかな味は、この水のおかげだそうです。

 

米もまた、地元の農家が作っている「吟のさと」という品種をよく使っています。

しかもできた米の状況をみて、造り方を変えているそうです。

例えば、背が高く伸びたときと、低くとどまったときでは、

米の栄養の状態が異なります。

 

サイエンスとアート

これまでの経験(データ)をもとに、それぞれの成育状況に合わせた酒造り。

ここではサイエンスを駆使しています。

 

ところがこの造り方だと、去年と今年で同じ味にはなりません。

毎年同じ味になるように仕上げる醸造会社がある一方で、

米などの条件に合わせて味を変え、

その時々で最高のものを提供するという姿勢は、

ユニークな作品を創るアーティスト的な発想です。

 

奈良発祥の水もと造り

そしてもう一つ気になる「水もと(菩提もと)造り」

室町時代に奈良県の菩提山正暦寺において創醸された醸造法。

蒸米ではなく生米を水に浸して発酵させ、ある程度発酵したところで、

水(そやし水)と米を分けます。

米を蒸してから、またそこにそやし水を戻して発酵させるという製法。

吉野での醸造に適したもので、これにより独特の酸味が生まれるのです。

 

ひたすら地元にこだわっているところもまた多くの人から愛される所以ですね。

 

個性を出す杜氏の哲学

醸造技術も常に進化していて、データに基づき

高い品質のお酒を造ることができるようになっています。

 

しかし、その味を超えて凄いお酒にするには、

杜氏の哲学や感性を最大限に生かして個性を出していくことが必要です。

その杜氏の姿勢がファンを魅了するのです。

 

 

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