マツダは2018年11月に、新型「マツダ3」をロサンゼルスオートショーで発表しました。
2012年に発売した「CX-5」以降、「魂動デザイン」(「KODO(Soul of Motion)」)に統一してきた
デザインコンセプトの新型車種です。
コンパクトカーからセダンまで、どれを見てもマツダであることがわかるデザイン、
搭載しているテクノロジーも共通させるようにしています。
アートシンキングによって生まれた魂動デザイン
この「魂動デザイン」の開発には「アートシンキング」が使われています。
マツダでは、デザインシンキングとアートシンキングを以下のように考えています。
デザインシンキングは、顧客のニーズを満たすことを目的としています。
多くの顧客が満足してくれますが、経済的価値や社会的価値は短期的なものになりがちです。
一方、アートシンキングは、アート作品と同様
クリエイターのアイデア、感情、信条、哲学の表現を目的としていて、
全く新しいニーズを提案することになります。
より基本的で本質的、スピリチュアルな価値、
そして人々が予想もしていない、あっと驚くモノを創り出すことを可能にします。
クラフトマンシップ
マツダがアートシンキングで車の開発をしたのは、
クラフトマンの技術と、新しい価値を創出しようという精神を重要視しているからです。
その考え方は、以下の3つのデザインコンセプトにも表れています。
- Dynamic beauty of wild lifeを具現化する。
- 情熱のないデザインでは、車に魂を染み込ませることができない。
- 車に命を吹き込む熟練した職人技
まさに、彫刻家が、作品に命を吹き込むというのと同じですね。
クラフトマンシップを活かすために、
Design Modeling Studioにいるクレイモデラーと、
Production Design Studioのデザイナーが協働して、
アートレベルのクラフトマンシップと大量生産とをインテグレートさせています。
クレイモデラーは、デザイナーとエンジニアが理想的な形を発見し
コミュニケーションするためのオブジェを創る重要な役割を担っています。
アートシンキングのモノ作りを可能にしたリーダーシップ
しかし、アートシンキングによるモノ作りは、個人の感情、心情、哲学に依存していて、
車のように大量生産する製品に適応させるには困難なことが多々発生するような気がします。
マツダの場合、アートシンキングによるデザインを可能にしたのは、
強力なリーダーシップとコンセプトがあったからと言います。
顧客のニーズを満足させればいいじゃないかという意見も多かったと思いますが、
それを超える価値を提案し創り出すことができたのは、
リーダーがぶれずに押し進めたからです。
ですから、顧客の満足を満たすレベルに達しても、
そこにとどまることなく、自らの哲学を満たすまで試行錯誤を続けたのです。
これは、限度のないトライ&エラーだったそうです。
自動車は、販売台数が数値目標になりがちです。
顧客満足を追求しどの会社のデザインも似通ってしまうことが多くあります。
最近流行りのワゴンやミニバンは、どの車種もそっくりです。
そんな中でマツダは、車のことを「作品」と呼び、
独自性と顧客満足を超える価値を提供しています。
このモノ作りと、それを可能にした組織には注目です。
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