イスラエルのグループが、細胞、血管、心房、心室を備えた心臓全体を
3Dプリンタで作製したと発表しました。
細胞や血管をもつ心臓を作製したのは世界初ということです。
ヒトに移植できるようになるには、まだまだ検討することは必要とのことですが、
再生医療の時代が近づいていることを感じさせるニュースです。
再生医療をテーマとした現代アート
2019年2月に行われた恵比寿映像祭で、
再生医療をテーマにした作品が展示されていました。
様々な臓器の形をしたジュエリーがマネキンを飾っていて、怪しい美しさを醸し出しています。
これは、岡田裕子さんの「エンゲージド・ボディ」
岡田さん自身の臓器を3Dスキャンして3Dプリンタで出力し、金箔でしあげた作品です。
3Dスキャンと3Dプリンタを使うと、非常に精巧な臓器の形を出すことができ、リアル感が高まります。
ジュエリーの展示の横で映像が流れていて、この作品のコンセプトが説明されています。
ドナーへの感謝の気持ち
臓器移植を受けた患者さんのなかには、ドナーにお礼をしたいと思っている人がいます。
しかし、プライバシーの保護のため、
臓器を提供したドナーと移植を受けたレシピエントはお互いを知ることはできません。
レシピエントは、お礼の手紙などを名前がわからないようにして
ドナーの家族に臓器移植ネットワークを通して渡します。
これは再生医療の臓器を移植した場合も同様です。
再生医療の時代になったときに、
感謝の表現として移植を受けた臓器のジュエリーを作り、
iPS細胞のドナーに贈ることがトレンドになるという近未来を想像したコンセプト作品です。
現実には、再生医療用のiPS細胞バンクを整備が進んでいます。
バンクを作ってしまうと個人を特定することはできないので、
ジュエリーは、移植関連の基金に寄付するということになるのかもしれません。
未来の世界を想像するアーティスト
再生医療の研究者は、冒頭のイスラエルのグループのように、
いかに早く臓器移植を実現するかに注力しています。
その一方で、アーティストは現実になった世界を想像し、
そこで生まれるであろう課題を見出し提起します。
先端技術を使うことでリアリティの高い課題提起となり、観ている人たちの記憶に残ります。
アーティストインレジデンスもそうですが、アーティストとサイエンティストが議論して、
未来社会を想像し課題提起することがもっと増えるといいですね。
開催概要
第11回恵比寿映像祭 The Art of Transposition
会期:2019年2月8日~2月24日
会場:東京都写真美術館
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