DNAと彫刻の相補的な関係 – 篠田太郎「on sculpture – between line and figure」

DNAと彫刻の相補的な関係 – 篠田太郎

 

MISA SHIN GALLERYで篠田太郎さん、崔在銀さん、川俣正さんの3人展が行われています。

 

ギャラリーの中央で輝くブロンズの彫刻、篠田太郎さんの作品です。

 

オークランド・アートギャラリーの螺旋階段

オークランド・アートギャラリーでの制作を依頼され美術館を訪れたとき、

使われていない螺旋階段が残っているのを発見します。石、鉄、木が使われている階段。

 

篠田さんは、彫刻は独立した状態で存在するのではなく、

文脈や環境のなかにおかれて成立すると考えています。

 

そこで、この使われていない螺旋階段の中央に柱を創ることを考えました。

 

実際の階段は高さが10 m以上あって、

しかも天井をぶち抜かないと柱を入れることができません。

環境のなかにおかれるというよりは、環境に押し入る感じでかなりの費用がかかります。

 

また、同じ柱を、屋外に単独で設置するそうです。

こちらは単独なので、完全な姿にはなっていない状態と考えられます。

 

二重螺旋の彫刻

展覧会で展示されているのは、ブロンズで創られた模型。

 

本来の階段の手すりとは別に新たな手すりを設置することで、

DNAの二重螺旋構造のようにみえ、階段と柱との一体感が強固になっています。

 

DNAは相補的DNAと呼ばれることがあります。

安易に変異が入らないように二本のDNA鎖が繋がり、螺旋構造をとっているのです。

 

階段と相補的な存在である彫刻のコンセプトを的確に表した形状と言えます。

 

また柱は中央部がくびれていてとても美しい曲面になっています。

別の場所にある柱が、逆に中央が膨らんでいるそうです。

こちらは美術館の歴史的なかかわりを示しています。

 

実際にオークランドに柱が立ったならば、

今は眠っている階段に再び命の火を灯すことになり、

単に彫刻をインストールするだけでなく、

美術館に大きな意義をもたらすことでしょう。

 

東大生を挑発する

その篠田さんは東京藝術大学の准教授ですが、今年から東京大学でも教えているそうです。

 

「東大に法学部や経済学部があること自体が、人間が未熟な証拠だ」

挑発的な発言で議論を引き出しているそうです。

 

小学校以来、決まった答えを導く教育に慣れてしまっているけれど、

必要なのは、問題を作ることと篠田さんは言います。

 

篠田さんと対峙することで社会の中に潜む問題点を見出し、

意義のある“彫刻”を打ち立てることのできる学生がどんどん羽ばたいてほしい。

そして、産業界の人たちにも、

この挑発的な講義が聴ける機会を作りたいと思います。

 

 

開催概要

篠田太郎、崔在銀、川俣正  on sculpture –between line and figure

会期:2019年4月11日〜6月1日

会場:MISA SHIN GALLERY

東京都港区南麻布3-9-11

 

関連リンク

MISA SHIN GALLERY

AUCKLAND ART GALLEY TOI O TAMAKI