アートバーゼル香港2019、ANOMALYのブースに展示されていた
柳 幸典さんの代表作「ザ・ワールド・フラッグ・アンド・ファーム」。
世界の国旗を砂絵で作り、生きたアリを入れます。
アリが活動することで道ができ、同時に国旗が壊れていくという作品。
国旗と国旗をチューブでつないでおくと、両方の色が混ざってきます。
国旗、国境、アート
実際の国の場合も、国境は人間が勝手に作ったもの。
アリは国境の間も自由に往き来しています。
国境があることで緊張や紛争など様々なことが引き起こされる、
そんな状況を表現した作品です。
北京オリンピックの時に北京で開催された展覧会で
チベットの国旗の作品を入れようとしたため、出典をキャンセルされるなど、
各地の展覧会で物議をかもしています。
一方でこの作品は、1993年、第45回ベニスビエンナーレで、
新進気鋭のアーティストを美術評論家やキュレーターが紹介する
アペルト部門で受賞するなど国際的な評価も得ています。
多様な視点を持つ
人は生れながらにして、人種、国籍、宗教など決められたことに属しています。
同じ場所にとどまっていると、一つの視点でしか物事を見られなくなってしまう、
だから、自分の位置を常に変え、多様な視点を持つようにして制作していると
柳さんは言っています。
その場所の人たちにとって、どの国旗とどの国旗を組み合わせるのが
重要なイシューかということをちゃんと見抜くことができるのです。
ブレグジット
今回の展示では、ヨーロッパの12カ国の国旗がチューブでつながれ、
その隣に一人イギリスが佇んでいます。
まさにブレグジットの状況を示しています。
3月29日、英下院は離脱協定を3度目の否決、
4月12日の合意なきブレグジットの可能性が非常に高くなっています。
現在進行形の作品で注目度も高くなっています。
さらにイギリスの横には、巨大アメリカが3段になって鎮座しています。
アメリカも今後どこに向かっていくのか、
柳さんの眼にはどのような未来が見えているのでしょうか。
それにしても、ヨーロッパの国旗でも、
どこの国かわからないものがけっこうあります。
それぞれの国を調べ、地図で位置も確認すること、
視点を広げる第一歩となるでしょう。
開催概要
Art Base Hong Kong 2019
Kabinett Section
2019年3月29日〜3月31日
Hong Kong Convention And Exhibition Centre
1 Harbour Rd, Wan Chai, Hong Kong
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