西洋の近代美術の重要な作家の作品をコレクションしていて、
特に印象派のコレクションは高い評価をえています。
今回の展覧会は、この2つの美術館のコレクションが集結、
74の作品が私たちを迎えてくれます。
その充実ぶりは、海外の美術館から作品を借りて行う企画展をはるかに凌駕しています。
印象派は光を表現しようとしてきました。
これだけの作品が展示されていると、様々な光が集まり、
まさに光に溢れた空間になっています。
さらに、2つの美術館のコレクションを並べることで
一つの美術館のコレクションではできなかった比較ができるので、とても貴重な企画になっています。
ポーラ美術館学芸課長の岩崎さん、ひろしま美術館学芸部長の古谷さんのギャラリートークで
この企画展の特徴が存分に語られました。
その内容をダイジェストでお伝えします。
両館は、ピカソの青の時代の作品を1点ずつ所有していて、
今回並んで展示されていました。
ピカソが息子のパウロを描いた作品もそれぞれ1点あり、
こちらも並んで展示されています。
しかも両方とも全身像で、これはとても珍しいそうです。
モネの作品はいくつか展示されていますが、
並んで展示されていたのは、『セーヌ川の朝』と『国会議事堂、バラ色のシンフォニー』。
いずれも連作の一つで、水面に景色が映る鏡像を描いている点も共通しています。
靄や霧の効果を表現していて建物と空や水面の境が判然とせず、
全体に平面的な描き方になっています。
新印象派の創始者、ジョルジュ・スーラは点描表現を確立しました。
光は色を混ぜれば混ぜるほど明るくなりますが、絵の具は逆に暗くなります。
そこでスーラは、混ぜたい絵の具を点描で隣に並べる「視覚混合」という手法を用いました。
これにより、鮮やかな色を出すことができます。
絵の枠もスーラ自身が描いていますが、
補色をおくことで絵を目立たせるようにしています。
また、スーラは大きな作品を創る前に、
シガーケースの板を使って色彩の研究をしていました。
今回、ひろしまが持つ習作と、ポーラがもつ大きな作品が並び、
スーラの制作過程を観ることができます。
そして、大正時代に人気があったというアンリ・ル・シダネル。
ジェルブロワという町に家を手にいれ、ここで制作をしていました。
今回、シダネルの作品が3点並んでいます。
他の印象派の明るい光とは異なり、月の光やランプの光を描いています。
人が出てこないにも関わらず、家の窓から漏れる灯りが暖かく、あふれる愛情を感じる作品になっています。
バラの花が描かれていますが、
シダネルがバラのブリーディングを始めたことで、
ジェルブロワはバラの町で有名になったそうです。
この二つの美術館は、作品の調査・研究にも力を入れています。
今回、ゴッホの『草むら』の裏面を公開しています。
木枠に描かれた来歴を見ることができ興味深いのですが、
さらにキャンバスの裏に絵の具がついているのがわかります。
ゴッホは、絵を描くと一旦キャンバスを木枠から外して重ねていたそうです。
半乾きで重ねてしまうので、下のキャンバスの絵の具が裏についてしまうのです。
裏の絵の具のパターンから下に置かれていた作品を探すことで、
制作時期や場所を知ることができるなど、
いろいろなことを調べることができます。
日本にこれだけの印象派のコレクションがある素晴らしさ、
多くの皆さんに観てもらって
創造力を呼び覚まし、多くのクリエーションに繋がるといいと思います。
ポーラ美術館xひろしま美術館 共同企画
「印象派、記憶への旅」
会期:2019年3月23日〜7月28日
会場:ポーラ美術館 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285