戦後の日本前衛美術とともに アレクサンドラ・モンロー キーノートレクチャー

アレクサンドラ・モンロー

2019年3月19日、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館アジア美術部門サムソン上級キュレーターのアレクサンドラ・モンローさんによるキーノートレクチャーがありました。

 

文化庁が日本の現代アートの国際的なプレゼンスと理解を高めることを目的に立ち上げた日本現代アートサミットの一般公開プログラム。

 

モンローさんはアジア美術専門とするキュレーター。

ニューヨーク生まれで、学生時代に日本に滞在し、

上智大学日本語・日本文化学科文学士号を取得しました。

 

その後、ニューヨークのジャパン・ソサイエティで、

日本を代表する現代アーティストと建築家の展覧会企画に携わりました。

2006年より、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館アジアン・ アート部門サムスン・シニアキュレーター、

グローバル・アート部門シニアー・アドバイザーとして、

非西洋圏アートの研究・作品収集・展示を取り仕切っています。

 

今回のレクチャーでは、彼女が取り組んだ展覧会を中心として、

日本の戦後前衛美術の動向を紹介してくれました。

 

欧米のアート界で語られる大きな誤りが3つあります。

・アジアにおける近代化は西洋化と同義である。

・パリ、ニューヨークの外からのモダンアートは亜流である。

・モダンアートの源流は西洋である。

これらは、日本の戦後前衛美術をみれば、明らかに誤りであり、

アジアにおいて独自のアートが創られてきたことがわかります。

 

日本の戦後前衛美術との出会い

日本での学生生活を終え、ジャパン・ソサイエティ・ギャラリーの仕事をするようになって

初めててがけたのが、NY在住の篠原有司男の個展でした。

篠原は前衛集団ネオダダに属し、

スタジオには半裸の芸者がオートバイにまたがる巨大彫刻などものすごい作品がおかれていました。

 

篠原は、子供の頃アメリカ兵にもらった飴玉の包み紙が唯一の色彩であり、

それがどれほどカラフルで、別世界へと誘う魔法の絨毯に見えたそうです。

 

モンローさんは、篠原の話に敗戦が前衛文化を生み出す原動力になっていたと感じ、

戦後前衛美術を研究することを決意したそうです。

 

1989年、ニューヨークにオープンした国際現代美術センターで草間彌生回顧展を行いました。

海外で初の回顧展です。

草間のアートが、ヨーロッパ、アメリカ、日本の戦後前衛美術にどれほど寄与したかを再考したことで、

再評価されるようになりました。

 

日本の近・現代美術が国際的テーマとして成り立たせるには、

新しい研究分野として確立することが必要ではないかと気が付いたといいます。

 

Scream the Sky

そして、1994年、横浜美術館「戦後日本の前衛美術:Scream the Sky」を行いました。

この展覧会はその後、グッゲンハイム、SFMoMAに巡回されました。

日本のアーティスト100人を超える作家の200点におよぶ作品を展示する大規模な展覧会、

横浜での展覧会の話を受けるにあたり、美術館全てを使わせてほしいと条件を出したそうです。

 

展覧会は9つのセクションからなり、

60年代のネオダダ、ハイレッドセンターから、

実験工房、東京フルクサス、オブセショナルアート、もの派、

そして80年代のダムタイプまで戦後美術のダイナミックな流れを紹介しました。

 

絵画、彫刻、パフォーマンス、ビデオ、フィルム、インスタレーション作品と、

あらゆるジャンルの展示をしたのも当時としては画期的でした。

 

このとき、NY Timesは、

日本の美術は西洋の文脈では語れない独自の変革を遂げたと評しました。

最初に彼女があげた誤りが解かれた瞬間でした。

 

2006年、グッゲンハイム美術館は、欧米の近・現代美術館では初の試みとして、

アジアを専門とする学芸部門を設立し、モンローさんが専門のキュレーターに任命されました。

これ以降、彼女がてがけたアジア関連の展覧会は11、他を圧倒しています。

さらに、アジアの作品について、ローカル/グローバルのレベルで位置づけ収蔵戦略をたてたのです。

 

2009年には李禹煥(リー・ウーファン)の展覧会を開催、

これをきっかけにもの派のマーケットができることになります。

 

急速に変化している現在においても、イノベーティブなアートの表現が社会の課題を浮き彫りにしています。

次にどんな表現が出てくるのか、注目しているのはいつも日本なのです。

 

開催概要

「トランス/ナショナル:グローバル化以降の現代美術を語る」公開キーノートレクチャー

 

講師:アレクサンドラ・モンロー

(ソロモン・R・グッゲンハイム美術館アジア美術部門サムソン上級キュレーター/グローバル美術部門上級アドバイザー,グッゲンハイム・アブダビ・プロジェクトキュレトリアル部門暫定ディレクター)

モデレーター:片岡真実(森美術館副館長兼チーフ・キュレーター)

 

日時:2019年3月19日

会場:六本木アカデミーヒルズ(東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー49階)