MAHO KUBOTA GALLERYで多田圭佑さんの個展が行われています。
「trace/wood」と「残欠の絵画」の2つのシリーズの最新作が展示されています。
「trace/wood」、一見、床材に絵具を塗ったように見える作品、しかし、木に見える部分も釘に見える部分も全て絵具でできています。初めてこの作品を観た時の驚きは今も忘れません。
その作品がさらにバージョンアップ、木の上に、プリントされたキャンバスのようなものが貼り付けてあります。
多田さんに聞くと、「これも絵具です。絵具のシートにプリントしています。アクリル樹脂ですから。」とさりげなく説明してくれました。
アクリル樹脂と言われればいろいろな形状を作ることができます。公園などで木に見せかけた柵やベンチがありますが、木ではないことは明らか。多田さんの作品がいかに元の素材を観察し再現しているか、その精巧さに感動します。
「残欠の絵画」は、ヨーロッパの伝統的な絵のように果物や花などを描いたもので、その表面がひび割れ剥落していて、かなり昔の作品に見える作品。こちらは素材の錯覚ではなく、時間の錯覚を創り出しています。
今回は、多田さんのアトリエにある本がテーマ。大半がアート関係の洋書で、古い絵の題材としてはとてもよく合っています。しかし、よく観ると、中には現代の雑誌やコンピュータ関係の本が混ざっていて、時間の感覚がおかしくなります。
現代の人がタイムマシンで過去に行き、自分が持っていた本を置いてきてしまった、Back to the Futureのシーンを思わせる作品です。
古典的な絵に見えるように描いたうえで表面を剥離させるのですが、この工程はコントロールできず、期待通りにならないこともあるそうです。
多田さんの古い伝統的な絵と信じ込ませる技術に加え、偶然性が支配している部分があるからこそ、リアリティが増し、人々の心を惹きつけ驚きを与えてくれるのでしょう。
多田圭佑展 「エデンの東」
2018年11月21日~12月22日
MAHO KUBOTA GALLERY