AOYAMA Unlimited vol.5 荒木悠を開催しました

AOYAMA Unlimited vol.5

2018年11月10日、void+でAOYAMA Unlimited vol.5 荒木悠を開催しました。

荒木さんは国内外で幅広く活躍されていて、今回のイベントにも前日に韓国から帰ったばかりの中、登壇いただきました。

 

今回は、荒木さんの作品の中から5本を選んで上映していただきました。

テーマの共通性や上映時間を元に厳選されたラインアップだけに、とても楽しむことができました。

 

その作品のいくつかをご紹介しましょう。

 

1.「Bivalvia: Act I|双殻綱:第一幕」

Bivalviaは「双殻綱(二枚貝)」のラテン語の学名。スペインを旅していて、人々が大量の生牡蠣を食べ、殻を皿に積み上げていく様子を見て、「中身を覆う殻」を主役にすることを考えました。

また、荒木さんは、ある事物が他の土地へと伝播し、その過程で生じる変容や誤訳に興味を持っています。この作品では、心中事件を起こした韓国の歌手ユン・シンドク(尹心悳)のヒット曲「死の賛美」を取り上げています。この曲は色々な国に伝わっていますが、全く異なる曲調や歌詞になっています。

映像の中では、カラオケのシーンが出てきますが、カラオケと殻をかけていたりします。「唄」という字が「口」と「貝」からなることにも着目し、「唄と殻と人を巡る輪廻転生のオペラ」が誕生しました。

荒木さんの作品は、色々な要素を集めて新しいストーリーに変容させています。ところどころ史実を取り入れていますが、作品全体のストーリーもまた事実と受け取ってしまうところに彼の作品の絶妙さがあります。

 

2.「WRONG REVISION(利未記異聞)」

 岡山芸術交流で発表された作品。岡山芸術交流は錚々たるメンバーが参加していて、これには悪魔と契約するぐらいでないとダメだと考え、中世に悪魔と契約した人たちをリサーチしました。

一方、岡山にはオランダ通りがあることに気づきます。出島のオランダ商館医シーボルトの娘、楠本イネが住んでいたことにちなんでいます。シーボルトが描かせたタコの絵がありますが、作者は石崎融思と言います。この人物、石崎家に養子に来ており、元の姓はなんと荒木!

岡山の下津井はタコが有名ですが、タコの墨でインクを作り、悪魔との契約書を作成しようとしました。ところがタコの墨はめちゃくちゃ臭い。そこで少しだけ混ぜたインクを作り、悪魔との契約書を作成、芸術交流で展示しました。10月8日が、World Octopus Dayでしかも岡山芸術交流のプレビューの日、この日を契約日にしたつもりが、日付を間違えAugust 8thとしてしまったことに後で気づいたといいます。

一つ一つのリサーチから物語を果てなく膨らませていくところが魅力です。

日付を間違えた契約書から、また新しいストーリーが生まれるかもしれません。

 

最後に上映した「LOST HIGHWAY (SWEDED)ー 特別版ー」では、主演の五月女哲平さんがスペシャルゲストで登壇、とても和やかな会となりました。