表参道ヒルズ スペース オーなどで、Media Culture in Asia: A Transnational Platformが開催されました。
アジアやフランスなどで発表されたメディアアートが一堂に会した展覧会。
この展示で印象的だったのは、坂本龍一+高谷史郎 『Water state 1』 と、Guillaume Marmi + Philippe Gordiani 『Timée』。
『Water state 1』は2013年に山口情報芸術センターで発表した作品。
部屋の中央に置かれた水槽に、天井から無数の水滴が落下し、波紋が描かれていきます。
坂本さんは、デュシャンが始めた20世紀的アートの次に来るものとして「nature」ではないかと考えています。それも、ただ自然を愛でるということではなく、データなどを分析して自然を見ることで意識を拡張させる、そんな作品を提示しようとしています。
『Water state 1』では、素数のアルゴリズムや、東南アジアの天候データをもとに水滴の落下派パターンを設定しています。また、空間を流れるサウンドも、落下する水滴に連動して変化します。
それにしても、波紋をじっくり見るのはなかなかない経験。一点から始まり果てなく広がっていく姿が宇宙を感じさせます。
しかもデータに基づいて水滴を落としているので、ポツポツと落ちるときがあれば、激しく降り注ぐときもあります。この複雑なパターンに、森の中で雨に降られているような感覚になり、懐かしく優しい記憶を呼び覚ましてくれる作品です。
一方の『Timée』、フランスの芸術祭で出品を依頼され、新しい作品の構想を練っていたとき、プラトンの『ティマイオス』を読むことを薦められました。
このギリシア哲学の本には、天体がそれぞれの軌道を運行するときに固有の音を発し、宇宙全体で音楽を奏でている “Music of the Spheres” の考えが書かれています。
宇宙物理学者と議論して、Music of the Spheresの世界観を表現しようとして創り出されたのが、この『Timée』です。人は出てこないけれど、ストーリーのある映画を創りたいと考えてそうです。
無数のレーザービームが暗い空間を高速で駆け巡り、その一つ一つの光に呼応して音も飛び交っていきます。
なんとも言えない飛翔感、眠っていた脳細胞が一気に目を覚ます衝撃の体験。
テクノロジーによってギリシア哲学をアートとして表現できるようになり、その過程から
さらに新しい思想を生み出す、まさに意識を拡張するアートに他なりません。
MeCA | Media Culture in Asia: A Transnational Platform
会期:2018年2月9日 – 2月18日
会場:表参道ヒルズスペースオー
ラフォーレミュージアム原宿など