テクノロジーの力 – THE EUGENE Studio『1/2 Century later.』

EUGENE Studio

資生堂ギャラリーで、THE EUGENE Studioの個展が行われています。
THE EUGENE Studioは、ものづくりに関して企業にコンサルをするなど
テクノロジーへの造詣が深く、
そのテクノロジーを現代アートの文脈に落とし込んだ作品を創造しています。

今回のメインの展示はとても衝撃的な作品、
ギャラリーの中央に、破壊し尽くされ灰を被った部屋が造られています。
「Beyond good and evil, make way toward the waste land」

中央に置かれた大きなベッド、周りを囲む調度品の痕跡、
これらから、かつての貴族の部屋を思わせます。

EUGENE Studio

実は、これはスタンリー・キューブリックの映画
『2001年 宇宙の旅』の最後のシーンに出てくる部屋
映画と同じセットを作り、実際に燃やして展示しています。
調度品の中には18世紀に作られた家具があり、大理石なども本物を使っているので、
破壊され具合がとてもリアル。

EUGENE Studio

EUGENE Studio

『2001年 宇宙の旅』はちょうど50年前の1968年に発表されました。
この映画が描いた21世紀の未来に魅了され、上映され続けています。
ところが、未来のイメージがこの映画に引きずられ、
新たなイメージが提示されなくなったと言われています。

『2001年 宇宙の旅』から半世紀、そろそろこの映画のイメージを破壊して、
新たな未来像を描くべきという問題提起としてこの作品は創られました。

でもこの50年でテクノロジーは飛躍的に進歩し、
かつて夢だったことの多くが実現しています。
イメージを引きずっているといよりは、
大きな未来像を描く必要がなくなっているという感じがします。

むしろこの作品は、テクノロジーが進歩しても、紛争やテロなどの社会問題は解決されず、
文明は常に破壊の危うさを抱えていることを暗示しているようです。

Beyond good and evilの向かいは、真っ白なキャンバスが一つだけ置かれた静かな空間。
「White Painting」
キャンバスを街中に設置し、通りかかりの人に声をかけ、
キャンバスにキスしてもらうプロジェクト。
これまで、米国、メキシコ、台湾で行われ、600人以上の人が参加したといいます。

EUGENE Studio

人種や宗教などの違いを超えて共感できるミニマルの力、
破壊の部屋の向かいにあることでより際立ちます。

それでも、テクノロジーにも共感や優しさに包まれた世界を生み出すことができると信じ、
次の50年の社会を創っていきたいものです。

THE EUGENE Studio  
1/2 Century later.
SHISEIDO GALLERY
2017年11月21日 – 12月24日