ユカ・ツルノ・ギャラリーで志村信裕の個展が行われています。
ところが、通常と異なりギャラリーの扉は閉ざされています。
小窓を覗くと、部屋の中は暗く時折微かな光が見えるだけ。
部屋の中に展示されているのは、志村さんの代表作「ring ring」。
2010年に台湾国際芸術村で滞在制作したものです。
台湾の旧正月、街じゅう金色と赤に彩られ、祝祭気分が盛り上がります。
その街の姿にインスパイアされ、金をモチーフとした「ring ring」を制作しました。
金色の小さな鈴を10万個ほど集め、
編んで暖簾のようにして、五角柱のフレームに吊るしてあります。
これがスクリーンの役割になっています。
このスクリーンに白い波の映像を投影しています。
真っ暗な部屋の中で鈴に光があたると金色に輝き、
旧正月に打ち上げられる花火のように祝祭の気分が高まります。
映像に音がありませんが、誰かが鈴の暖簾をくぐると
チリン・チリンと音が鳴り、作品が完成します。
鈴が小さいので、光がデジタル的な動きをします。
時おり聞こえる音と相まってエコライザーの画面のように振舞うのも面白い。
延々眺めていても飽きない不思議なエネルギーを持っています。
作品タイトル「ring ring」は、鈴が鳴る(ring)の意味に加え、
「歓迎光臨(ホワンイングワンリン:いらっしゃいませ)」の臨(ring)にも由来しています。
この臨(ring)は「come」を意味し、
光の中に人が入ることで完成するこの作品にぴったりだと言います。
台湾での経験から、制作する場所の歴史などを丹念に調べ、
その土地に由来する作品を創るようになりました。
そんなエポックメーキング的作品。
4月からは、志村さんはパリに旅立つ予定ですが、
また一つ新たなステージへ羽ばたこうとする決意を感じます。
志村信裕『歓迎光臨』
2016年3月19日〜4月16日
YUKA TSURUNO GALLERY