杉本博司の粋 -『趣味と芸術-味占郷/今昔三部作』

杉本博司

千葉市美術館で杉本博司さんの展覧会が開催されています。

二部構成になっていて、一部は杉本さんのライフワークとも言える
「海景」、「劇場」、「ジオラマ」のシリーズを展示する『今昔三部作』。
全てモノクロで、どこにも人の姿が写っていない緊張感の張り詰めた展示です。

杉本博司

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そして第二部は、古美術商でもある杉本さんが集めた古今東西の美術品の展示で、
私としては、こちらの方が興味深かったです。

『婦人画報』に「謎の割烹 味占郷」というシリーズがあります。
杉本さんが各界の著名人を味占郷でもてなす企画で、
ゲストごとに軸と置物を選んでしつらえていますが、
その床飾りを再現して展示しています。

かつて日本家屋には床の間があって、軸をかけ花や置物を置いていました。
杉本さんは、床の間が日本文化の重要な核と考えていて、
 「床の間から、季節とその心が消え失せる時、その時は日本文化が滅びる時」
と言っています。

それだけに気合を入れてしつらえた床飾り、
普通の床の間では見ることのできない置物が鎮座しています。

イタリア・トスカーナ地方で出たキリスト胸像、
南北朝時代の兜の中から伸びる須田悦弘さん作の夏草
擂り鉢の軸に摺り鉢、
硫黄島の地図とそれを保管する鞄、
そして自ら制作した海景五輪塔
この五輪塔は光学硝子で出来ていて中に海景の写真が入っています。

杉本博司

杉本博司

杉本博司

杉本博司

杉本博司

杉本博司
味占郷でもてなす料理を入れた器も展示されています。
江戸時代の器、ルーシー・リーの作品はわかりますが、
電球型の器、日独伊防共協定締結記念鍋、
昭和30年代のゆで卵器など
よくこんなモノが残っているなという謎の品々も登場。

杉本博司

杉本博司
杉本博司
他の人だったらしつらえには使わないようなモノたち、
杉本さんの手にかかると立派なアートに。
ありとあらゆるモノを観てきた杉本さんの「粋」の世界。
開館20周年記念展
杉本博司 趣味と芸術-味占郷/今昔三部作
千葉市美術館
2015年10月28日〜12月23日


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