表参道のスパイラル開館30年を記念して行われている
『スペクトラム – いまを見つめ未来を探す』。
「スペクトラム」は、プリズムを介して生じる“色彩の配列”を意味します。
光はプリズムによりいろいろな色に分けられますが、
それは連続していて色と色の間に境界はありません。
現代美術、音楽、ダンスなどの芸術も本来境界はなく連続しています。
スパイラルは、「生活とアートの融合」をテーマに、
境界を超えたアートを提示することに挑戦し続けてきました。
記念のこの展覧会では、スペクトラムのように多様な表現で
新しい価値を生み出そうとしている、
栗林隆、榊原澄人、髙橋匡太、毛利悠子の4人の作品が展示されています。
栗林隆さんの作品『Vortex』は、巨大な黒い幕で覆われた空間に
一つのシャンデリアが設置され、まばゆい輝きを放っています。
黒い幕は、実は土砂など粒状のものを入れるフレコンバック。
よく見ると、シャンデリアの各パーツはアルファベット。
このアルファベットは、かつてアインシュタインが
ルーズベルトに送った手紙の文章になっています。
その内容は、アメリカの原爆開発を促し、
ドイツの核使用を抑止しようというものでした。
このような意味をもつことを認識して、再度この作品を観ると、
フレコンバックに覆われたシャンデリアが、ただ単に美しいだけでなく
もうひとつ別の姿をもっていることに気づきます。
毛利悠子さんの作品『アーバン・マイニング:多島海』。
彼女は、最近「都市鉱山」に興味を持っています。
大量の廃棄物から、再び資源として生まれ変わるものが多く存在し、
廃棄物と資源との境界もまたなくなっていることに気付きました。
LED化に伴い廃棄されたかつての街灯や、
つぶした空き缶を用いたインスタレーション、
偶然回路が繋がると、
古い巨大な街灯やミニチュアの街灯が点灯します。
息絶え絶えのように巨大な街灯が横たわるも、
時々思い出したように点灯する姿に、
都市の底知れぬ力を感じる作品です。
榊原澄人さんの作品『Solitarium』。
天井のドームに投影されたアニメーションを床に寝転がって鑑賞します。
彼は、ループと連続性を重要視しています。
時間は、リニアに流れるのではなく、
ループを繰り返して進んでいくと考えています。
画面のあちこちで、ストーリーが生まれ閉じていきます。
しかも、こちらの物語の終わりに残された物が、
次の物語のきっかけになっているといった連続性があるのが面白い。
つい、じっと見入ってしまいます。
それは、人間社会の時間の流れを表現しているからに違いありません。
高橋匡太さんの作品『いつか見る夢「散華」』。
過去30年に流行した色を集め、
スパイラルの空間を光で染めていきます。
その光は、オーロラが流れるように刻々と変化し、
30年の歴史を表現している、
スペクトラムにふさわしい作品。
スパイラル30周年記念事業展覧会
スペクトラム ―いまを見つめ未来を探す
2015年9月26日〜10月18日
スパイラルガーデン