箱根彫刻の森美術館で行われている
淺井裕介さんの個展『絵の種 土の旅』。
彫刻の森美術館は、広大な庭に彫刻作品を展示しています。
しかし、最近は彫刻と絵画の境界が曖昧になっていることから、
斬新な作品を創っている日本の作家を招いて
屋内展示をする企画を行っています。
その企画の一つとして、今回の個展が行われています。
淺井さんは、各地の土を使って壁に絵を描く「泥絵」と
マスキングテープで植物や動物の形を作り、そこにペンで絵を描く
「マスキングプラント」のシリーズを多数発表しています。
今回は、「泥絵」と「マスキングプラント」を融合させた
全く新しい作品「土の旅」を発表。
その作品は、本館ギャラリー2階に展示されています。
淺井さんは、いつも壁に泥絵を描いていますが、
ここは、非常に大きな空間があるため、
部屋の中央に絵を置くことを考えました。
これを実現させるのにマスキングテープが登場します。
パネルの代わりに、プラスティック段ボールを利用、
段ボールにマスキングテープを8層に巻いて自立型パネルを作りました。
この作業だけでも、とんでもなく大変だったそうです。
この自立型パネルに土で絵を描き、屏風のように立てることで、
巨大な要塞が出現しました。
今回25種類の土を使っていますが、箱根周辺の土も使われています。
作品でイメージしたのは土の中の世界、
照明をかなり暗くしていて、
その効果で、ところどころに光の模様のや影の模様が現れます。
影のラインに沿って歩く鳥なんかも描かれています。
また、床の部分をよく見ていくと、
ヤオヨロズサマと名付けた小さな陶器の人形が置かれています。
じっくり探検すると、無数の発見がある、とても楽しい作品です。
ヤオヨロズサマは、泥絵で使った土が少なくなってきたとき、
その土を残すために、陶土と混ぜて焼くのだそうです。
中2階の部屋から見える庭にも隠れていました。
そして、得意の「泥絵」の壁画は1階、
「マスキングプラント」は中2階に展示されています。
中2階では、マスキングテープの芯とあまったテープで創った
立体の「青犬」も愛嬌をふりまいていて、
淺井ワールドを満喫できる展覧会。
淺井裕介『絵の種 土の旅』
彫刻の森美術館 本館ギャラリー
2015年9月19日 – 2016年2月28日