6月中旬のベネチア、既に夏の日差しが降り注いでいます。
ベネチアビエンナーレは今年第56回、120年という歴史をもちます。
ArsenaleとGiardiniの2会場をメインとして開催されていますが、
初日はArsenaelに。
ここは、造船所であったところで、
レンガ造りの巨大な建造物の中に数多のアート作品が展示されています。
総合キュレーター・Okwui Enwezorによる企画展と
各国の展示からなる芸術祭ですが、
Arsenaleの前半は企画展になっています。
一番最初の作品から、刀やノコギリが床に刺さっていて
不穏な始まり。
ところが、この作品のタイトルは「Nympheas」、
モネが描いた睡蓮。
タイトルを見てからもう一度作品を観ると、
たしかに床のあちこちに花が咲いているようにも見えてきます。
この企画展では、武器を使った展示が非常に多い印象を受けます。
Melvin Edwardsの彫刻、Goncalo Mabundaの銃弾を用いて創った椅子など。
搾取を取り上げた作品も多く、主張が一目でわかります。
主題は表現の奥に潜ませて、観る者に問いかけるというのが
現代アートの魅力だと思いますが、ちょっと直接すぎます。
大きな部屋の一片に積まれたドラム、Terry Adkinsの「Muffled Drums」、
もはや音はでません。
そして、部屋の反対側に鎮座するのはカノン砲、
Pino Pascaliが1965年に制作した「Cannone Semovente」、
これは廃材などで創られていて、弾を撃つことはできません。
音のでないドラムと弾の出ない大砲を対峙させることで、
争いの意味のなさを表現しています。
一方、主題を作品の奥に潜ませた絵画も勿論あります。
Chris Ofili、そしてLorna Simpson、
神秘的で素敵な作品の奥に、アフリカや女性問題への眼差しがあります。
半年ほど行われる芸術祭だけに、期間中ライブで作品を創るプロジェクトもあります。
Dora Garciaのパフォーマンス、
美大生が1日1枚カンバスに色を塗るMaria Eichhornの作品、
そしてブロックを作り続けるRirkrit Tiravanija、
ブロックは10ユーロで売られ、中国の労働者の権利のために使われます。
このような現在進行形のプロジェクトの目的は、未来を創ること、
『All The World’s Futures』のタイトルにふさわしい。