東京都現代美術館で開催されている、
ガブリエル・オロスコ展 『内なる複数のサイクル』。
ガブリエル・オロスコは、1962年、メキシコ生まれ。
1990年代から、ニューヨーク、パリ、メキシコシティなどに
拠点をおいて活動している。
ところが、日本では今回が初の個展。
担当学芸員の西川美穂子さんによるギャラリーツアーに参加した。
オロスコは、普段なにげなく見逃している事物に
ちょっとだけ手を加えて(Intervention)作品を制作している。
水たまりに描かれた円、
オロスコが、2つの水たまりの間を自転車で行き来して円弧を作った。
こうして写真を撮ると、なんでもない水たまりがアートになり、
そこに空が映っていることに気がつく。
とは言え、説明を聞かなければ、やはりただの水たまり。
鑑賞者の想像力も要求される作品だ。
オロスコの代表作とも言える「La DS Cornaline」。
1950年代のシトロエンDSを変形させた作品。
子供のころ、オロスコはF1レーサーになりたかった。
そして、乗用車の中央部分を除いて流線型にしたら、
F1用のレーシングカーのなるのではと考えていた。
そんな少年時代の思いを実現させた。
シトロエンを3分割して、中央部分を除いて接合、
流線型の二人乗りの車ができあがった。
こちらも鑑賞者の観る力が必要だ。
鑑賞者は車の周りを自由に観て歩く。
すると、次第に車とは別のものが観えてくる。
ギャラリートークとあって、
特別にボンネットを開けて見せていただいた。
さすがにエンジンはなくて空間になっている。
形は車だけれど、もはや自動車ではない。
動きもしないのに、形だけで自動車と認識してしまう私たちのものの見方、
オロスコはそこに楔を打ち込んでくる。