イムラアートギャラリー東京で、
版画家そして京都市立芸術大学名誉教授でもある
木村秀樹さんの個展が行われている。
版画は普通、表面に刷られた作品を観るもの、
しかし木村さんは、表と裏と両方観てもらえるものを創りたいと考え、
『Charcoal』に取り組んでいる。
和紙の片面に、原寸大の炭の写真をプリントし、
さらにシルクスクリーンを施し、
焼鏝で一部を焦がす。
和紙に展開図を描き、炭の写真が表になるように立体を創り出す。
裏の炭の絵と表の淡い色のコントラストが美しく、
物語の舞台になりそう。
それだけではなく、ガラス板の上にこの作品を置き、
上からライトで照らすと、
アートな影が出現する。
これは偶然の発見だったそうだ。
富士山の作品の影など、とても幻想的。
表と裏と影が三位一体となっているところは
なんとなく人間の有り様や社会の構造をも表現しているように思える。
炭素という生命の根源をモチーフとして、
焦げ目をつけて、元には戻せない状況にすることで
時間をも感じさせる、奥の深い作品。
どの面を見ても、全体を見ても
バランスがとれ美しくあるという理想、
人間にとっても、社会にとってもチャレンジングな課題です。