家畜にみる消えゆく産業の姿 – AOYAMA Unlimited vol.6 志村信裕

家畜にみる消えゆく産業の姿 - AOYAMA Unlimited vol.6 志村信裕

 

6月29日(土)void+でAOYAMA Unlimited vol.6を開催しました。

今回お招きしたアーティストは志村信裕さん

一緒に上映したかったという、動物をテーマにした『見島牛』『Nostalgia, Amnesia』

そしてルーヴル美術館に展示されていた羊の絵を撮影した『ルーヴルの羊』を上映。

 

ゲストのDIC川村記念美術館 学芸員の光田由里さんのコメントや質問により、

志村さんの制作方針が浮き彫りになり、作品の理解がとても深まりました。

 

家畜にみる消えゆく産業の姿 - AOYAMA Unlimited vol.6 志村信裕

 

志村さんは、基本的に人物の顔は映さないようにしています。

顔が映ると、そのキャラに引っ張られてしまいがちになります。

個性を排除することで、人類の産業の歴史、家畜との関係といった

大きなテーマを描こうとしています。

 

ところが、『Nostalgia, Amnesia』では、バスク地方のイケメン羊飼いだけ

バッチリ顔が出ています。

羊に似ていると志村さんは言っていましたが、

素敵な色のセーターを着て語る彼の姿は、

このテーマの語り手としてふさわしい人物です。

 

また、撮影する時は三脚にカメラを固定し、

被写体を追うようなことはしないそうです。

この撮影方法も客観性を高めています。

 

家畜にみる消えゆく産業の姿 - AOYAMA Unlimited vol.6 志村信裕

 

このようにして撮影した、

バスク地方で羊毛から毛糸を紡いでいるおばあちゃんと

成田空港のすぐ隣で農作業をしているおじいちゃん、

二人の手仕事が交互に映し出されます。

その所作はよく似ていて、いずれ消えゆく産業の姿を描いています。

 

同じシーンが何度も繰り返されつつも話が展開していく構成を、

光田さんは変奏曲のようだとコメントしました。

この言葉は、志村さんの作品を最もよく表していると思います。

 

 

そして、『Nostalgia, Amnesia』は、

村上春樹の『羊をめぐる冒険』を参照しているそうです。

7月13日から千葉県立美術館で開催される個展でもこの作品は上映されるそうです。

『羊をめぐる冒険』との関係を探してみてはどうでしょうか。

 

志村さんと光田さんのトークは果てしなく続き、終了したのはなんと22時前。

でもそれだけ充実した上映会になりました。

 

登壇いただいた志村さん、光田さん、

そしてご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

 

家畜にみる消えゆく産業の姿 - AOYAMA Unlimited vol.6 志村信裕

 

開催情報

AOYAMA Unlimited vol.6 志村信裕

プログラム

『見島牛』 『Japanese Cattle』

  2015 年 /日本 / スーパー8 からHDV 変換 / モノクロ / サウンド / 20 分

『ルーブルの羊』 『Mouton du Louvre』

  2019 年/ フランス / スーパー8 からHDV 変換 / カラー / サイレント / 1 分

『Nostalgia, Amnesia』

  2019 年 / フランス・日本 / HDV / カラー / サウンド / 45 分

 

トークゲスト: 光田由里(DIC 川村記念美術館 学芸員)

 

開催日:2019年6月29日(土)

会場:void+

東京都港区南青山3-16-14 1F

 

「千葉の新進作家vol.1 志村信裕 ‒ 残照 – 」

会期:2019 年7 月13 日~9 月23 日

会場:千葉県立美術館

千葉市中央区 中央港1-10-1

 

関連リンク

AOYAMA Unlimited

SHIMURA NOBUHIRO

Yuka Tsuruno Gallery

DIC川村記念美術館

void+

千葉県立美術館