混沌を映すマーブリング – 吉楽洋平個展『Formless』

吉楽洋平

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KANA KAWANISHI GALLERYで、吉楽さんの個展が開かれています。
色々な国の新聞にマーブリングを施した作品です。
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2015年11月、写真家の吉楽さんは刊行した写真集のサイン会のため
パリを訪れていました。
そしてサイン会前日にあのテロが起きたのです。
サイン会は中止、空港に向かう途中、
爆弾があるという情報に民家に逃げ込むという緊迫した状況も経験。
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日本に向かう飛行機の中で、今回の作品を思いついたそうです。

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吉楽洋平
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マーブリングは、9〜10世紀頃に中国/日本で墨流しとして誕生、
シルクロードを伝わり、トルコを基点に15世紀頃欧州へと派生していきました。
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吉楽さんは、マーブリングのグローバル化の礎となった
トルコのマーブリング技法・エブルを1年かけて習得し、
今回の作品を制作しました。
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各国の新聞は、大使館に依頼、
快く協力してくれた国もあれば、
電子版を読んでいて紙の新聞は置いてない国、
使えるページを指定してきた国と、その対応も多様でした。
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いくつもの色が絡み合い複雑な模様を描くマーブリング、
粉末の絵具に、Öd(雄牛の胆汁)を加え、水に浮かべて模様を作ります。
Ödの効果で絵具は一つの色に溶け合うことはありません。
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世界はグローバル化を進めてきましたが、人々が一つになることは難しく
半グローバル主義に傾いている現在を見事に表現しています。

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吉楽洋平
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もともと、エブルは証書の用紙、カリグラフィーの下地などに使われてきました。
作品は、逆に文字や写真の上にエブルを施すことで、記事自体は読めなくなりましたが、
背後に広がっている混沌とした状況を炙り出しています。
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また、イスラム国家トルコでは絵画に抵抗があり、
エブルのような抽象的なデザインが絵画的に使われていたそうです。
写真の上にエブルをかぶせることで、文化の違いをも表出させています。
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米国大統領が変わり、先行き不透明な今、
時宜を得た、奥の深い作品です。

吉楽洋平

吉楽洋平

吉楽洋平
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/吉楽洋平個展『Formless』
2016年12月17日- 2017年1月29日
KANA KAWANISHI GALLERY

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*エブルについては、駒崎加奈さんの論文を参照しました。


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